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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

コーヒーから葉っぱの話 (No.293)

10月1日はコーヒーの日だそうです。コーヒー屋カルディでは10月2日までキャンペーンでコーヒー豆はポイント二倍です。宇宙人はいつものキリマンジャロの代わりに新製品のドイトンなるタイ産豆を買ってみた。貧困により麻薬(ケシ)栽培するしかなかった農家を助けるため、麻薬農地をコーヒー畑に転化させた製品だそうだ。宇宙人は以前コロンビアの生花を輸入する仕事をしていて、麻薬の栽培地はそのまま花やコーヒーの栽培適応地であることを知っている。最近になって花やコーヒーを輸出し始めた地域は、こういう前身を持つことを心に留めなければならない。ドイトンコーヒー、おいしかったらまた買うからね。

前回宣伝した自作小説『メタフォーラ・ファンタジア』を早速お買い上げ頂いた方、誠にありがとうございます。一気読みしても5、6時間はかかるのでまだ読了されていないことを期待して、補足を少々。
小説の舞台となっているブハラという町は中央アジアにあるウズベキスタンのオアシス都市で、中世よりイスラム文化の華ひらく都市国家として永く栄えた。この辺りのイスラム国家は12世紀以降チンギス・ハーンとその子孫により征服、徹底的に破壊され、しかしそこは処世術、時の権力者は強い者にすり寄って再び国を栄えさせる。中央アジアの王族はハンと名乗り、モンゴル貴族と婚姻関係で結ばれ、モンゴルが衰えると代わりに勃興したオスマン・トルコを宗主国と仰いだりして巧みな外交を見せる。今の日本も学んでほしい。
しかし19世紀には強大なロシア帝国の南下政策に遭ってハン国は次々と降伏し、帝国領土に組み込まれる。ハンの一族はロシア皇帝の温情でホームタウンに住むことを許されたが、20世紀のロシア革命で皇帝が倒れると、共産党政権はハンたちを人民の敵として迫害、収容所送りにした。もっともハン国の庶民がハンを恋い慕っていたかといえば、そうでもない。明治維新の頃の日本が天皇を頂点にとりあえずまとまって近代化したのに対し、中央アジアが仰ぐべき核はオスマン皇帝であり、この頃のオスマン帝国は間もなく崩壊し、小さなトルコとして近代化する。
中央アジアもこれに倣って近代化したかったが、時は恐怖のスターリン時代。赤軍の激しい弾圧に遭って、中央アジアはソ連に併合、宗教は事実上禁じられた。ロシア帝国以来の政策を受け継いだソ連政府は、中央アジアを綿花供給地としてほぼ植民地化し、その工業化を妨げたが、幸か不幸か地域が近代化しなかったおかげで、今日ブハラやサマルカンドなどのオアシス都市は中世以来のイスラム建築を残して世界遺産となり、観光で稼げる美しい景観を保持している。
しかしソ連が崩壊すると、中央アジア五か国はソ連時代に人工的に引かれた国境線と民族の不一致が顕現し、各地で民族抗争が起き始める。皮肉なことにこうしたナショナリズムによる争いは、社会主義イデオロギーと強力なソ連軍のおかげで半世紀以上も制御されてきたのだった。もはや制御しうる力のないこの地では、1992年にはタジキスタンが内戦に突入し、数万の死者とその何倍もの難民を出し、隣国アフガニスタンを巻き込んで、やがてタリバーンやアルカイダの跋扈を許すことになる。イスラム原理主義者によるテロを警戒したロシアが仲介に入ってタジク内戦は97年終結するが、2001年には9.11のテロを受けてアフガニスタンが再び戦場となり、米軍の駐留はまだ続いている。

小説の背景はざっとこんな感じですが、あまり大っぴらには説明しておりません。テーマはあくまで音楽と詩の話なので、登場人物たちがどういう時代にあってその犠牲になりつつ文化を継承するかというのが本筋です。メタファーがテーマのひとつでもある本作品は、間接描写でこうした歴史背景が主人公たちの生活を脅かしていることを表現しておりますが、時代背景がまったく判っていないと読み飛ばしてしまう恐れがあります。皆さん、国際時事問題には日頃から注意して暮らしましょう。
なお中央アジアを含む中近東地域は伝統的に麻薬摂取の習慣があり、こうした事実から目を背けるとリアリティを欠くので小説にも盛り込んでおりますが、麻薬を賛美しているかのような表現もあるので、読者の皆様には予めご了承下さい。
by hikada789 | 2012-09-28 01:40 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人