毎年暮れになると宇宙人は年末年始の休日に読む本のリストを記事にして掲げてきたので、今年はどうしてそれがないのかと友人に問われた。わが友人の中には宇宙人の読書傾向に興味を覚えて、普段読まないロシア文学などを手に取ってくれる人もいる。そうした友人が休日のお勧め図書情報を土星の裏側から得ようと覗いたのに「ないではないか」と。
すまぬ。このところ宇宙人はらしくもなく忙しかったのだ。画像のような琵琶の撥ケースの注文がまとめて入ったり、老いるショックに備えて読みかけだったロシア語小説を最初から読み直したり、怪談琵琶曲として能の「枕ノ段」から作曲を構想したり、急ぎの革グッズを作ったり、靖国神社で奉仕したり、その合間に飲み過ぎてゲロを吐いたりと、普段やらないことが折り重なって積み上がったのをちまちま片付けていたら、本を読む時間が取れなくなったのである。じっくり読書はロシア語小説で手一杯だったので、図書館から借りて来たのは息抜き用のカラー写真付き図書ばかり。民芸品案内とか写真集とかだ。
その写真集、雑誌AERAが編集した羽生結弦の大判写真集が図書館に入っていたので予約して借りてみたのだが、「閉架」扱いとなっていた。開架に置いておくと不届き者のファンが持ち出して返さなかったり、お気に入りのページを破いて懐に入れるかもしれず、予防措置というわけなのだった。まあ閉架にしておいても同様の事件は起きるかもしれないが、借りた本は今のところ新品同様であった。図書館にあることがあまり知られてないのだな。正直言って宇宙人は羽生君のファンというほどではない。大谷翔平同様とてもいい子だけど、大谷のホームランと同じくその四回転ジャンプに魅力があったのであって、キャラはそうでも。ただこの写真集は有名なカメラマンが撮影したというので興味が湧いたのだ。うむ、モノクロ写真はいい雰囲気であった。しかしやはりカメラ目線のモデルというのは、誰であっても宇宙人の心に訴えて来ないのであった。横顔やさりげない仕草に惹き付けられるニッチな宇宙人なのだった。
閉架といえば。武田邦彦先生が称賛する木村盛世著『医者にかからない幸福』という新刊本を去年読もうとして図書館で検索したら、まだ入荷していなかったので、代わりに木村盛世×和田秀樹『なぜ日本は勝てるはずのコロナ戦争に負けたのか?』という対談本を借りてみた。そしたらこれが「閉架」扱いになっていたのだ。何かやばい本なのか? 実際読んでみたところ、これは既に過去の事件となったコロナ禍の対応にまつわる行政の失策のあれやこれやを医者の立場から検証した本であった。「当時は判らなかったけれど今となっては判っている事実や真実」を列挙した内容で、初版は2022年1月だからまだコロナが五類になっていない頃のものだ。2025年も明けた今、判ったことは更に増えているはずだが、トレンドが去ったせいか更なる検証を叫ぶ声はなかなか聞かれない。そういう意味では貴重な証言本なのに、なぜ閉架であるのか? 東京都の教育委員会から閉架にせよとのお達しでもあったのか、それとも何某かの忖度? いずれにしても誰かに都合の悪い真実を隠したいという歪んだ意図を感じて頭がねじれる宇宙人は、気になる箇所を抜き出してとっておいたので、年末年始の読書未消化の方々には新年の読書のラインナップに加えてくれなのだ。勿論全編読むことをお勧めする。皆さんの町内の図書館でも閉架になっているのかな? どうして閉架にする必要があるのか、それを指示した側に対して厳しい目を向ける訓練をしたら、昨今流行りの闇バイトの類にも引っ掛かりにくくなろう。※印は宇宙人のつぶやき。
――高齢者を人工呼吸器につないだとしても、一般的に予後がよくないので、高齢者の幸福度も低い。そのためコロナ禍以前には臨床現場で、高齢者には人工呼吸器をつながないということが行われてきたのに、コロナ禍の現在ではそれが高齢者の死を軽んじるとか、そういう議論になってきている。ここに日本社会の幼児性を見せられた。国はこういったことを国民に説明し、コロナ対策に組み込むことが重要であったし、政策にそういったことが入ってこなかったことが大きな反省点だと私は思っています。――
――政策決定において、尾身茂をはじめとする分科会の面々が、普段は臨床を行なっている人たちではないという点があります。それ以前に終末期医療に関して言えば、(略)大学病院は今、患者さんを長く置いてもらえないので、死ぬところまで立ち会うということがほとんどない。そういう現場を知らない人たちがしゃしゃり出て、政策決定の場やマスコミで勝手な発言をするから本当に大事なことが決まらない。――
――(コロナ禍で無策を露呈した医師会の大御所医師たちのような)淘汰されなければならない医師が発生したのは、要するに日本では戦後、国民皆保険制度が整備され、国民が治療費を心配せずとも医療を受けられるようになったことが発端です。国民皆保険制度は国民にとっては素晴らしい制度でしたが、医療費は大幅に増えることとなった。そのため医療費を抑制する様々な政策がとられました。その一つが医療報酬の減額です。多くの病院は収益を維持するために、患者数と受診回数を増やす薄利多売方式に切り替えた。その結果、病院は生活習慣病の患者に本来は必要のない検査をしたり、飲まない方が良い薬を与えたり、薬の処方箋は小分けにして患者の受診回数を増やすようになった。彼らは不必要な検査をし、必要のない薬を処方し、患者さんの寿命を縮めているのです。…コロナ禍で病院が怖いというイメージが国民に広まり皆が極力病院に行かなくなりました。その結果何が起こったかというと、死者数が減ったのです。――
――例えばタミフルの90%は日本で消費されています。タミフルには副作用があるのに、実際には熱を下げるのを一日早めるだけの効果しかありません。インフルエンザなんて多くの場合は、ポカリスエットを飲んでいれば治るわけです。それなのに病院へ行って無駄な診察費を払い、診断書を書いてもらい、タミフルを処方してもらう…――(※宇宙人の病院不信はまさにこの仕組みのせい)
――日本ではメンタルに対する対策がほとんどなされていません。外国に行けばメンタルヘルスが公衆衛生の中でもかなり重要なパートを占めていますが、日本では精神科の教授たちは動物実験ばかりして論文の数を稼いでなった人ばかりだから、人間のメンタルヘルスに興味がないんですね。…日本全体が総合的に物事を考えられなくなっています。――
(※以前は西洋医学こそが人の健康ではなく局部的な患部の治療しかしないと揶揄されていたが、日本もそうなってしまい、西欧を追い抜いている。)
――(がん)検診を受けたからといって、死亡率が低くなるデータはどこにもありません。日本人は早期発見・早期治療が好きですけど、早期発見・早期治療で日本人の死亡率が下がったという明らかなエビデンスはまだ得られていません。…がんが手遅れにならないと見つからないのは、ひとえにがんという病気が、そんなに皆が考えているほど痛み苦しむ病気じゃないからです。――
――超高齢化社会というのは、ダメなところを抱えながらいかに上手に生きていくか、幸せに生きていくか、と考えることが大切なのです。それなのに、ダメな部分を見つけたら全部直さなきゃ気が済まないみたいな考えで、悪いところばかりを見ていたら、歳を取れば取るほど惨めになるに決まっているじゃないですか。歳を取ってもまだこんなことができる、と思わなければならないのに(日本はそうではない)。――
――自分だけではなく他人も巻き込んで不幸にしていくことでしか安堵感を得られない。日本人の特殊性がある。井戸端会議でも、幸せな話をするとシラーッとされるのに、不幸自慢をする限り話が盛り上がるのは、日本人の異常性の一つだと思っています。――
(※宇宙人もシラーっとする方だが、不幸自慢は更にシラーッとする方だ。どちらも本人の感想に過ぎないし、同意を強制したものだからだ。役に立つ「意見」だったら聞くのだが。)
――日本は、専門家を集めるといった時に、もう終わっている人たちを集める。普通の国なら、教授になった後でいろいろ研究をしてノーベル賞を獲ったりするのですが、日本では教授が上がりのポストなので(こういう教授を集めても)何ら役立つ意見が出て来ない。特に尾身さんの場合は、…彼がWHOで活躍していたのは21世紀ではなく20世紀なわけで、彼のような古い考え方でいえば自粛の一点張りになる。(本来ならずっと研究を続けている現役の学者を連れてくるべきなのに)――
――危機管理というのは、要は柔軟性を持つことです。わかっていないことがわかったら、方向を変えればいいのですから。この柔軟性のない人が罹るのがうつ病であり、適応障害なのです。心の柔軟性のないのが適応障害とういことです。体に柔軟性がないと骨折するのと同じ。――
――そもそも論として、インターネットの時代なんだから会議なんて全部公開にすべき。日本は文書で公開しても、重要な部分は全部黒塗り。まだ中国の方がオープンかもしれない。中国は習近平という地雷さえ踏まなければ結構言論の自由があるのです。中国にはいくつか地雷があるが、地雷以外は結構許す。キリがないから。香港などはイギリス流だから(人権活動家が)逮捕されても拘置所で取り調べて、割と釈放されている。日本なんて逮捕されたら警察署で取り調べて、自白するまで帰さないんだから。――
(※袴田事件その他の冤罪事件の結末は記憶に新しい。しかし和田氏の言う香港と、大陸中国は違うぞ、と私は言いたい。香港もいずれ大陸中国のように適当ないちゃもんをつけて逮捕投獄・獄中死寸前で釈放、という現行パターンになると予想される。これに比べりゃ日本の方がマシではあるが、それでも日本もヒドイ有り様ではある。目糞鼻糞を笑う程度に。)
――医療はこれから劇的に変わる。例えばiPS細胞が実用化すれば、動脈硬化を起こした血管にiPS細胞を貼り付ければ元の細胞が蘇る可能性がある。そうなれば従来の高血圧の薬や血糖値を下げる薬を後生大事に5年も10年も飲み続ける必要はなくなります。iPS細胞で患部を取り換えればいいという発想になれば、現在やっている内科的治療はほとんど必要なくなります。…診断もAIがやってくれた方が誤診が少ない。そういう時代がすぐにやってきます。その時に医者は何をすべきなのか。それは病気や治療のことを上手に患者さんに伝えることだったり、安心感を与えることだったりするのかもしれません。――
――(医療のみならず)マスコミもバカばかり。今回のコロナ禍に象徴されていますが、マスコミのやっていることは、煽りか揚げ足取りかのどちらかしかありません。ですからある話題から発展して、ビジョンを示して、こういう風な日本にしましょうという前向きな話になっていきません。――
(※同じようなことを佐藤優氏も言っていたな。)