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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

フクシマのウシ、チェルノブイリのシカ (No.082)

土星の裏側ではロシア贔屓の宇宙人がロシアの隠れた魅力について熱く語っているので(いや結構けなしてもいるかも)、誤解されてはいけないと思うが、チェルノブイリのような致命的な事故を派手にやらかしてしまうのもロシアなら、その事後経過を緻密に観察してしまうのもロシアである。(チェルノブイリは厳密にはウクライナであってロシアではないが、当時はソ連で一体であったし、民族的にも近親なので、細かく分けないことにする。)
福島の原発事故より少し前に制作された記録映像で、チェルノブイリのその後の生態系について、かなり真面目に取り組んでいる研究者の報告を見たが、驚くべきことに、ある科学者は研究目的とはいえ現地の汚染地帯に長年住みつき、現地の土で育てた野菜を食って生活している。はじめはどんなアホな農夫かと思ったが、立派な学者で、曰く「このチェリーは果肉は汚染されてないんだよ。でも種は高濃度の放射性物質を含んでいるんだ。だから種を捨てて食べれば大丈夫だよ、ほら」とむしゃむしゃ食べてしまう。なんだか質の悪いホラー映画を見る気分だが、こうした思い切りのよさもロシアならではの風景かもしれない。
研究報告によれば、汚染地域に棲む森の動物でも、ねずみは耐性を備えた固体が生き延びて繁殖しており、天敵の大型動物が激減したお陰でねずみ王国になっている。一方鳥類は激減し、耐性をつけた固体が見られない。ねずみと鳥の差が何なのかは判っていない。ねずみにしても事故当時は高濃度汚染のためほとんどのねずみが死に絶えたが、ほとぼりが冷めた頃、よそから来たねずみが低濃度汚染に適応し、繁殖に成功している。どうやって「適応」したのか、教えてくれ。

チェルノブイリはこうした研究目的の人間以外は依然立入り禁止の無人地帯だ。当地の映像は幻想的で、国営アパートが立ち並んだかつての町がこれといった破壊の形跡もなく廃墟となり、のび放題の草木に覆われている。町は森に飲み込まれ、森からやってきた野性動物がためらいもなく横行している。動物を狙う人間はいない。かつては飼育されていたかもしれない野生のウマやシカが、人気のない街なかをのんびり草を食んで暮らしている。人間がいないというだけで、風景は非日常的に映る。
避難区域に指定されている福島原発周辺も、たまに取材のカメラが入ると似たような風景を見せてくれる。典型的なのは野生化した家畜がエサを求めて走って移動している様子。我々は普段、野生の動物を見ることはない。山にでも暮らせば別だが、町に住んでいると、動物はみな飼われている。大型のウシやウマやヤギは狭い柵の中におり、せいぜい広めの放牧地に放される程度で、常に人間の監視の下にある。犬猫に至ってはリードでつながっているのはまだましで、散歩するのにだっこされてたりする。運動できずに太るペットたち。走れない獣というものは、美を損なっている。宇宙人の目には、放浪する家畜たち、確実に汚染されていく無防備な動物たちが、自由と美を取り戻したように見える。
人間が自由と美を取り戻すのはいつだろう。
by hikada789 | 2011-07-11 22:52 | ロシアの衝撃 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人