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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

酔いしれたい人々 (No.148)

宇宙人お気に入りの東京限定ローカル番組に世間のお騒がせ男、田母神俊雄元航空幕僚長が出演、他局の批判をチラ見せした。彼は福島県郡山市出身だそうで、福島の原発事故について以前某ディベート番組に招かれて意見を求められたので正直に語ったという。「福島はチェルノブイリと比較にならない軽度の事故だ。避難区域の放射線量だってレントゲン一回分にも及ばないのは医学的に証明されているのになぜメディアはこれを積極的に報道しないのか。福島県民は集団移住する必要なんかなかった。世田谷で今回の事故と無関係の放射性物質が発見された時、その上で寝ていたおばあさんは92歳まで元気だった。92歳だよ。その程度の放射能でどこの健康に被害が出るのか、と。しかしこのコメントはカットされて放送されなかった。この番組の放送の中で、自分はずっと黙ったままだった。本当はいろいろしゃべったのに、全部カットだよ。この国のマスコミはおかしいね。安全だっていう真実より危機感を煽る報道をしたがるんだからね。」

宇宙人お気に入りの作家、佐藤亜紀が戦争小説『ミノタウロス』で似たようなことを言っている。「犠牲は大きければ大きいほどよかった。」人々は命を落とした近親者の犠牲による悲しみよりも、その悲しみに自ら深く酔いしれる方を好むのだ。そのためには誰にも文句を言わせないほど悲惨な犠牲が必要なのである。確かこんな論調だったと思う。
大岡昇平も『レイテ戦記』でいやな真実を短く述べている。「国家は勝ち目のない戦地に膨大な量の若い命を次々投入する一方で、その死を名誉の討死と喧伝することで遺族の虚栄心をくすぐった」云々。

日本人はこういうテーマは案外得意なのかもしれない。たまたま上記3名は日本人だけど、ロシア文学を好む宇宙人は、ロシア的思考の中にこうした指摘は見たことがない。自ら悲劇の主人公をやってみたいという人間の欲望は万国共通であると思うが、そこにバッシング覚悟でツッコミを入れるくらいの気概はまだ日本にはあるのだな。
以前、友人と現代日本文学を論じていた時、よしもとばなな氏の作品がウケる理由が判らないという点で意見が一致した。友人曰く「作品の主人公が自分のビミョーな不幸に酔っている気がして好かない」。確かその友人も福島県出身だったな。
by hikada789 | 2011-11-23 23:49 | 宇宙人の読書室 | Comments(2)
Commented by 助手経験者 at 2011-11-25 22:30 x
はじめておじゃまします。
数々の読み物、大変興味深く読ませていただいてます。

会社でこっそり読んでると、吹き出してしまうような内容もあり、これから会社で読むのはやめようと決めましたが(笑)

宇宙人さんの新たに見せていただいた数々の魅力を、これからも堪能させていただきます。
Commented by hikada789 at 2011-11-25 22:57
ご来場ありがとうございます。会社で笑うのはまだましで、電車の中でケータイで読みながらニヤけている人もおるそうです。しかし宇宙人の文章は実は読んでも意味不明という人が多くおるので、笑える人は読書能力を密かに自負してもよいかもです。

by 土星裏の宇宙人