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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

いばら姫に学ぶ (No.314)

『眠れる森の美女』(原題『いばら姫』)も歪められた認識で普及してしまっている。王子のキスで目覚めたというのは実は偶然の出来事で、原話によれば、13番目の賢女(後に魔女とされる)に呪いをかけられた王女は、12番目の賢女によって呪いの続きを予言される。それは王女が呪いに従い15歳の年に死ぬのではなく、ただ眠りにつくだけであり、その眠りは100年後に覚めるというものだ。実際に15歳で眠りについた王女は、どういうわけか王女だけでなく城中の全生物も道連れにして眠り続け、いばらの繁った深い森が城への侵入者を阻むのだが、ちょうど100年経った日にたまたま王子が城へ赴くと、魔女の呪いが自然に解けていばらもほどけ、すんなりと王女の所へ到達でき、おそらくキスしなくても王女は目覚めたのだが、一応「愛の力」とやらで目覚めた格好にしているのが現代の普及版である。
しかしディズニーはアメリカ式勧善懲悪なので王子のキスは絶対必要だ。だって王子が来ても来なくても王女は勝手に目覚めたなんて、アメリカ式資本主義で育って国のために働く米国男児の存在意義を揺さぶってしまうではないか。しかし哀しいかな、男が英雄であってもなくても、それどころかいてもいなくても、女はお構いなしに勝手に生きていけるのである。これが真実なのである。

グリム童話は本当はここのところを言いたかったのだ。なぜならこれらの昔話はキリスト教普及以前に成立した土着信仰に基づく寓話で、そこにはドイツが本来持っていた地母神信仰や自然崇拝などのアニミズム世界があり、必ずしもキリスト教的人間愛や道徳観が介在していない。善と悪はあるが分明は不明瞭で、魔女や悪魔といった明確な悪は存在しない。13番目の賢女は魔女ではなく、「欄外」の神である。王女の誕生の祝いに招かれたのは12人の賢女で、これは12カ月や12宮を表す世界の完成した形であり、13番目の数字の入る余地はない。それなのにうっかり現れた13番目の賢女は、講師によれば地母神そのものであり、他の12の賢女とは格が違うので王女に強力な呪いをかけることができた。どうして呼ばれもしない地母神が現れたのか寓話は理由を説明していないが、理由が人間にはわからないというところもまた、この世の不可視の世界の条理なのである。
ともあれ11番目の賢女の祝福の後に割り込んだ13番目の賢女の呪いを解く力は、12番目の賢女にはなく、「15歳の年に死ぬだろう」という呪いの直球を「死ぬのではなく100年間眠るだけだ」と変化球にすることしかできない。地母神には敵わない12番目の賢女の能力の限界である。しかし地母神もこの後更に呪いを上乗せしようとする執念は見せず、何もしないで帰ってしまう。一体何しに来たのやら?そして15年後に王女は城ごと眠りに就き、100年後に呪いが解けて自然に目覚める。たまたま王子が居合わせたので彼の手柄として二人は結婚するが、王子の存在はこの呪い物語には全然必要なく、ただ神々のイタズラによる「異常な事態」から王女が「尋常の世界」に戻った象徴として描かれるにすぎない。この時代、男子に求められる英雄性は存在しないのである。

講師の解説によれば、キリスト教以前のドイツには、村の若い男を一人選んで生贄とまではいわないまでもトリカブトなどの危険な薬物を塗るか服用させて、魂をあちらの世界へ旅させる風習があったという。この儀式の後で無事にあちらの世界から生還した若者は特別な力を授かったとされ、豊作や戦さでの勝利を約束する存在として重宝されたらしい。この習俗がいばら姫のエンディングにおける王子の登場に影響しているのかもしれないが、いずれにしてもキスという愛の力はこの時代は何の効力もなく、その後のキリスト教と騎士道が男たちを慰め鼓舞するために用意した付け足しだったのである。
唐突にグリム童話の話が続いたと思っている方、だめですよ、ちゃんと土星裏ブログの一貫したテーマに沿っているでしょ。12という数字が完全を意味するというのは算命学にも共通ですし、善と悪、すなわち陰陽の境界が不明瞭であること、この世の理が人知や道徳観を超えるものであることもピンと来ないといけません。キリスト教がもみ消した土着信仰はどうやら万国共通の根を持っており、今日の行き詰った世界の価値観にヒントを与えるものです。こういうラジオを偶然聴いていると、どういうわけかその種の書籍や情報が手元に転がり込んでくる。いずれ内田樹氏と中沢新一氏の対談本を紹介しましょう。人類の営みは「等価交換」ではなく「等価かどうか永遠にわからない故に継続するのだ」というユニークな発想を展開しております。宇宙人、秋の読書中。
by hikada789 | 2012-11-15 15:06 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)