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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

布団カバーを自作する (No.509)

今日は朝から裁縫に励む。掛布団カバーに穴が開いたので新調しようと店を回ったが、安い中国製品は色柄に趣がなく布もペラい。国産品は品質はいいが規格生産のせいか無地ばかりで選択の幅が狭い。北欧かどこかの舶来品はさすがにセンスがいいが、いまひとつ我が家の風景と合いそうにない。そして高い。仕方ない、時間だけはあるからな、というわけで自作することにした。宇宙人が縫い物? 時々やりますよ。今回のように袋シーツの中央に穴が開くと、無疵な四隅を切り取って枕カバーにする程度には。近頃は敷布団の真ん中が破けてきて、本体は健在で使えるから表布の破れた所だけ当て布を縫いつけたりした。すぐ捨てることは考えない。なるべく修繕して寿命を延ばし、好みの色柄の布を活用して愛情が持続するようにする。愛着はエコの基本です。
しかし最近は布地屋の閉店が相次いでいるようですね。当てにしていた渋谷駅前の店はいつの間にかシャッターが下りていたし、この業界もネット通販が押してきている。そもそも手造りする人が少なくなったかな。途上国の安い人件費で作った既製品を買った方が早いのだろう。でもこの種の格安製品は寿命が短い。今回穴の開いたシーツも頑張ってやっと3年くらいもたせたけど(お蔭で四隅は枕カバーに転用できないほど擦りきれた)、10年以上前に買った国産のカバーは布地も厚く未だに使える。10年で3回買い替えることを考えると国産品1点の値段も高いとはいえないから、色柄さえ選べれば国産でも買うのにな、と不満に感じつつもときめきながら布地屋を回る宇宙人。物を作るのは好きなのだよ。布地を選ぶのもね。

しかし布地もひと昔前に比べると値上がりしたなあ。これでは布代だけで安物シーツ3点セットが買える値段ではないか。わが労力は無償としなければ。あちこちの店をニョロニョロと廻り歩く宇宙人。あった!これだ。地はミルクを入れたモカ茶色に、白で模様が描かれている。顔を近付けると水紋の周りに漂う魚の群れが。デザイン化された魚たちは茫洋とした表情がなんともシュールで、中にはアジの開きが混じっている。このセンスはどうかと思うが遠目には好みの色なのでこれに決める。値段も安く、1m180円を6mお買い上げ。安物シーツと同じ値段だが布の厚みは3倍ある。断然こっちだよ。
前の晩は風呂に入りながら頭の中で裁断をシミュレイト。ミシンもないのでひたすら真っ直ぐ手縫いするだけだ。ファスナーは付けない。昔ロシアにいた頃、奇しくも北欧製のシーツカバーを買ったところ、片側のサイドを60cmほどわざと開けてそこから布団を出入りさせる仕組みだった。懐かしい。ファスナーは便利ではあるけれど、例によって安物だとちょくちょく引っ掛かって面倒なのだ。さすがに日本製は引っ掛からない。縫製にコツがあるらしい。
CDでロシアのオペラを聴きながら、制作時間3時間。完成。布団を入れるとピッタリ。深く満足する宇宙人。新しい布の匂いっていいですよね。丈夫な布だから5年は使えそうだ。余り布があるから修繕もできるし、大事にしよう。

以前から友人に勧められていた『パパラギ』を読む。1920年頃にドイツで書かれた小作品で、一度廃れたあと70年代に再ブレイクした、サモア諸島の酋長から見た白人(パパラギ)社会への痛烈な批判の書である。故郷の島民に向けた酋長の演説集という形をとっているが、実際はドイツ人の作家が書いたフィクションで、産業革命から第一次大戦を経た西欧文明が、南国の未開の島民から見ればなんと愚かなものに映るかを描出し、しかもその西欧人にとっては島民たちの方こそ非文明的で愚かなのだと指摘することも忘れない。解説を記した日本人の意見によれば、自然を壊してばかりの白人文明を憎むサモアの人々は日本人をギリギリ「ブラザー」と見做してくれているが、もう日本人もぼちぼち「パパラギ」の部類にどっぷり浸かる頃だと嘆いている。
簡易な文章なので子供にも読めるが、西欧をはじめ今日の日本も当然含まれる現代社会に対する厳しいツッコミ満載なので、現代社会における諸問題や本質的な危うさについて目を向けたことのある人でないと楽しめないかもしれない。章分かれした指摘の一つは、パパラギつまり現代人がたった一つの己れの職業にこだわるあまり、その他の作業は何もできない人になってしまったと警告する。機械の発達により単純労働が主流となり、職場で座ったままのパパラギは手足が萎え、肥満し、物を作るにしても分業によって一部分しか作らないから完成品に携ることができず、物を作る喜びを失ってしまった。物を作らなくても金を払えば買えるから、この世で一番大事なものは金になってしまった。南の島では物づくりは喜びであり、一部分の単純作業ではなくひと通りを誰もがこなせるので、作業に飽きることはなく、いやいや労働する者はいない。喜びのない単純作業に人生の大半を費やすパパラギは不幸である、云々。
どうですか。とりあえずお気に入りの布地を選んで布団カバーを作るところから始めてみましょうかね。
by hikada789 | 2014-01-24 18:12 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人