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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

漢字の読みがキモチ悪いのだ (No.551)

STAP細胞論文騒動で最近連呼されるようになった理化学研究所。この機関の正式名称は本当に「理化学研究ショ」なのだろうか。我が世代では研究所と書いたら迷わず「けんきゅうじょ」と読むのであるが、いつから「しょ」に? これでは「研究書(けんきゅうしょ)」の発音と同じになって紛らわしいではないか。分けた方が利便性が高いのに、誰が言い出したのだろう。「依存」もそうだ。我が日本語では「いぞん」と濁るのであるが、最近のニュースのアナウンサーでも「いそん」と読むのが若年層に多い。ベテランはそうでもないけど。「いそん」と聞くと何か損をしている印象が湧いて、否定的なイメージが広がるのであるが、個人の自立や独立採算を求める昨今の社会風潮が、何かに「依存」する甘え体質な人々に対しネガティブなレッテルを貼ろうとしている表れだろうかと勘繰る宇宙人なのだった。「既存」もそうだな。これこそ「名誉棄損」のキソンにモロかぶりで、旧い物を悪者にしたがる誰かの陰謀を感じるのだよ。え、考え過ぎだ?

そんなことはない。ロシア専門家の佐藤優氏がどこかで書いていたが、日本人に馴染みの薄いロシア語の世界では、同じ意味でも異なる単語が山ほどある。もちろん若干のニュアンスの違いや使用方法の差異という実用上の理由から同義語が複数あるということもあるが、佐藤氏の慧眼によればロシア人というのはその数ある同義語からたった一つの単語を選ぶとき、例によって文章全体の音韻を考えて「より詩的」になるよう頭を使う。詩的な文章を即興で披露できるとロシア人は自身でも悦に入ってしまうのだが、周囲からも称賛されるし、その場で記憶してもらえる。世の中には頭のいい奴と良くない奴がいるが、詩的なフレーズを駆使できる奴ほど頭の回転が速く、優れた人物だと見做される。優れた人物は多くの言葉を知っており、その語り口は音楽的で耳に心地よく、人々はつい聴き入ってしまう。
言葉の内容だけでなく耳触りも重視するこのようなロシア語圏で、ここ百年の最大のヒットワードは「ソヴィエト」だ(発音はサヴェート)。日本人の耳にもいい響きだと思う。レーニンが言い出した。ソヴィエトの本来の意味はいくつかあり、「助言・忠告」が第一義で、第二義が「会議」という意味なのだが、ソヴィエト連邦のソヴィエトは第二義の方だ。革命に当たって労働者階級からも代表を募って広く会議をするというところから発した政治用語で、会議という意味の単語なら他にサヴェシャーニエとかザセダーニエとか、集会という意味を含むサボールとか、英仏からの外来語とか色々あるのだが、レーニンはたってソヴィエトを選んだ。そしてその後ろに連邦とか同盟とかいう意味のソユーズ(発音はサユース)をくっつけた。合わせて「サヴェーツキー・サユース(ソヴィエト連邦)」。なんと頭韻しているではないか。しかもS始まりの爽やかな音韻だ。
佐藤氏の意見では、こうした韻律レトリックは外国人には判りにくかろうが、ロシア人のメンタルには大きく響くという。そしてレーニンなりスターリンなりはこうしたロシア人の耳に繋がる心の傾きを熟知しており、大衆の耳に心地よい言葉を並べることで革命政権の残虐性やボロを隠した、その技術が卓越していたという。

スターリンが言語学に通じていたというのはその論文が日本でも翻訳されているから業界では有名な話だが、政治家なり言論人なりが使うレトリックというより音韻の威力について、日本の知識層はどの程度認識しているのかな。冒頭の漢字の読み方の変化が果たして言論統制を目論む誰かの思惑の表れなのかはともかく、例えば我が国の国営放送は随分前に英語のCを「スィー」と発音した時期が一時期あった。「シー」では何がいけなかったのだろう。それとも英語圏の人間に「シーだと自分達に判りにくいから変えろ」と迫られでもしたのだろうか。しかしどうやら評判が芳しくなかったようで、1年ほどで消えて元のシーに戻って今日に至る。誰が言い出したのか知らんが無駄なことをしたものだ。
シーは英語だからまだいいとして、歴然たる日本語の読みがおかしな発音に変わってアナウンサーらが右へ倣えしているのは、特に国営に限っては何か陰謀のような匂いを感じないでもない。或いは地方出身の職員が入社時に発音を笑われて、その怨念が出世した暁に「今後は研究所はショと発音すべし、統一すべし」と訓令したのやもしれぬ。ああうっとうしい。スィーと同じくらい耳障りだ。こんな報道番組なぞハイそうですかと素直に聞き流してはやらないからな。ショやソンと読むアナウンサーかそうでないアナウンサーかで、その頭の回転や自国の言葉に対する認知度を量ってやる。英語がいくらできたところで綺麗な日本語に転換できなければ誰も耳を傾けてなどくれないのだよ。言葉とは本来何のために発するものなのだ。相手に伝えたり説得したりするためではないのかね。数ある同義語の中から一番効果の高い単語を瞬時に選び出す技術を、レーニンとスターリンから学んでくれ給え、なのだ!
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by hikada789 | 2014-05-12 18:58 | ロシアの衝撃 | Comments(0)