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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

ルサールカの意味 (No.600)

前回続き。『チェルノブイリの森』を読み進めると例のねじけた松の木の写真が出てきた。説明によると、セシウムやストロンチウムなどの危ない放射性物質は細胞の成長している部分に集中して蓄積されるため、樹木なら先端に奇形が現れる。その典型である松の木はてっぺんが箒のようにボサボサしていて、これは幹や枝の先端が正常な成長を阻害されたために引き起こされた発育不良の結果だという。なるほど真っ直ぐでないとはいえ能舞台の松の絵のどっしり感と比べるとえらい違いだ。同時に報告者は木の種類によって放射能の影響を受けやすいものとそうでないものがあると指摘している。松は受けやすい種で、受けにくい種はポプラなど。同じ場所の被曝者でも個人差が大きいが、ずっとそこに立ったまま移動するわけでもない樹木でさえそうなのだ。影響を受けやすいとはつまり周囲の環境に敏感だということ。松が神聖視されて古墳の上に植えられたことは、これを何となく傍証しているような気がする。逆に鈍感な奴、というと大抵悪口になるが、鈍感な人ほど丈夫で長生きというのもここで傍証されてしまったような気がする。

また報告者は云う。「ある種のバクテリアはセシウムに対し旺盛な食欲を示す」。実は私が最近騒いでいるEMはこの部類のバクテリアであり、実際にチェルノブイリの除染に使われて効果を上げたという。日本の発明品なのだから福島でも使われているはずだが、一般には報道されていない。EMがあれば原発事故起こしても安心じゃんといった剣呑な風潮が広まるのを阻止するために、誰かが隠しているのかもしれない。無論EMも万能ではないのだから。

報告者はウクライナ系米国人なので、ウクライナで育ったわけではないとはいえ感覚はロシアと共通する柔軟さが垣間見える。ロシアを含むスラヴ民族の民間伝承にルサールカという水の妖精がいるのだが、これは森に迷い込んだ人間を水辺に誘って溺死させる妖怪で、日本の河童と違って容貌が美しいことからドヴォルザークのオペラにもなったりしている。ルサールカはニガヨモギを嫌うため住民らはニガヨモギを軒先に吊るして魔除けとする習慣があったが、ニガヨモギといえばチェルノブイリの和名だ。厳密にはチェルノブイリに相当する植物は別の近似ヨモギだそうだが、現地ではほぼ同一視されている。
ヨモギは我々日本人も食べるが、ニガヨモギは文字通り苦くて食べられない。動物さえ食べない。ルサールカも嫌いだ。しかし近代化により土地開発が進むと、ニガヨモギを含む森は更地となり、そこに原発を建てて街が築かれた。ニガヨモギが生えなくなった隙を突いてルサールカは勢力を盛り返し、人間に災いを降り注ぐ。原発は爆発し、人々は住めなくなって余所へと消え、無人の廃墟には森林が生い茂る。もちろんニガヨモギも復活した。ニガヨモギの復活によりルサールカは再び沈黙するが、人間は未だ戻れずにいる。
ウクライナの血を引く報告者は、ルサールカが単なる迷信やおとぎ話にすぎないと看過するには符合がありすぎると述懐している。昔話には伝承されるに値する相応の意味が込められているのだと。こういう感覚は、金儲けがサクセスと考える無神経な多くの米国人とは一線を隔していることを強調しておきたい。

ところでガーデニングが好きな人はご存知だと思うが、植物というのはいじめるほどよく成長し、花や実を沢山つける。いじめるというのは水や肥料を少なくやったり、成長の悪い茎や蕾をどんどん間引くということ。そうすると栄養分が必要な部分だけに集中して成長を促し、或いは植物自身が生命の危機を感じて早く子孫を残そうとするため、より多くの花や甘い実をつける。どの花も大事にして咲かせようとするとロクな実が成らないのだ。
野菜などでも育ちの悪い芽は隣の元気な芽を生かすために間引かれる。日本でも昔は生まれた子供を間引いていたし、姥捨て山伝説が伝説ではなく実話であったことは知られている。現在高齢化社会に直面している日本の財政を圧迫しているのは、子供ではなく老人である。老人が大事にされて繁栄するとロクな後継者が育たないのである。人間社会は植物の生態に学ぶ余地があるかもしれない。
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by hikada789 | 2014-09-01 11:37 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)