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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

2つの戦争エンタメ映画 (No.604)

No.602で肩こりほぐしネタまでに戦車バイアスロンの話題を入れてみたが、奇しくもシャフナザーロフ監督の「ホワイト・タイガー」はバリバリの戦車映画であった。制作は2012年とごく最近だが、舞台は第二次大戦の対独戦を描いているから戦車も当時のモデルを使用している。娯楽目的の映画制作の評価が極めて低いロシアであるので、単なるバトルアクションに終わらない教訓話を最後に入れているところにお国柄が出ていたが、ハリウッドのミリタリー映画がやたらと機関銃を乱射して消費社会をひけらかしたがるのに対し、この映画は戦車が至近距離で砲弾を撃ち込むので、一発でも轟音で観客席が揺れるのである。戦車同士の接近戦なんて今まで発想がなかったような。もちろんCGはゼロ。盛大に炎を巻き上げております。ロシア文化の重厚感とファンタジーを同時に味わえる不思議な作品です。

戦争映画といえば、昨今のイスラム国の騒ぎに至るイスラム世界の心情がよくわかるトルコ映画「イラク・狼の谷」というのがイスラム圏で驚異の大ヒットを飛ばしている。2006年くらいの作品なのだが、内容は佐藤優氏曰く「イスラム版ランボー」で、米国人ランボーが米国の敵と戦うのをひっくり返し、主人公のイスラム教徒が残虐な敵である米国人と戦うという反米映画である。しかもその米国の暴虐シーンというのがここ数年で実際に起こって報道もされた米軍による誤爆(自称)やらグァンタナモ捕虜虐待やらを再現したものなので、泣き寝入りしていた現地の住民はよくぞ語ってくれたと拍手喝采なのだ。
世界中のムスリムがこれに同調しており、一方悪役にされた米国では上映禁止。イラクなどイスラム圏に駐留する米軍兵士には現地の映画館に近付くことさえ禁じるほど神経質になっている。尤もこの映画はネットでタダで見れるからあまり意味がない。英語版もあるし、私はロシア語吹替えで見てみた。旧ソ連圏にはロシア語を解するムスリムが多くいるから、チェチェン人なんかはこっちで見ていると思われる。制作側のトルコ人も著作権をガタガタ言って削除させるようなこともしておらず、お蔭で世界中に観客を獲得している。欧米で生まれた発想である著作権への逆襲である。

作品自体はまさにランボーの焼き直しといったところで、恐らく制作スタッフはハリウッド映画の手法を学んで作っているから、パッと見はハリウッド映画のように軽くて陳腐だ。ただ敵味方が逆転している。中東世界の人々が米国人や米軍兵士の典型をどのように捉えているかが、その悪役の悪役たるキャラぶりによく現れていて興味深い。欧米嫌いの私は見ても驚かないけど、外国といえば先進国しか眼中になく、英語さえマスターできれば日本語なんかどうでもいいと考えている浅いタイプの日本人には、世界認識の偏りを矯正する意味で役に立つかと思います。日本語字幕付きでツタヤとかにも置いてあるそうです。
とはいえ傑作とは呼べない。ハリウッド映画のパクリなので当然ロシア映画のような教訓めいたシーンもなく、最後ははっきり云って赤の他人ともいうべきヒロインの唐突な死で終わるのが大変俗っぽく、これまたハリウッドを忠実に模倣している。制作者のトルコ人がここまで承知でパクっていたとしたら大した皮肉屋だが、その辺の是非は見ただけでは判らない。重要なのはこんな映画がイスラム圏で大ウケして、今日のイスラム国に共感する若者を煽ってしまったことだ。こんなB級反米映画が歓迎されるような世界を作った原因が何かを追求しないで、空爆ばっかりやったって事態は解決しはしないのである。
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by hikada789 | 2014-09-11 14:57 | ロシアの衝撃 | Comments(0)