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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

作為の極みと弊害 (No.606)

戦争映画の感想なんぞを書いたものだから宇宙人が映画好きと思われては誤解になる。実際のところはソ連・ロシア映画を機会があれば見る程度で、その他の娯楽映画はほとんど見ないしレンタルもしない。たまにテレビでやっているのを見るが、そもそもテレビもさほどは見ない。嘘っぱちが嫌いな宇宙人は役者さんたちの演技がどうしてもわざとらしく感じられて感情移入できないからだ。それよりは素のままのドキュメンタリーの方が興味が湧くし、いっそアニメの方が嫌味がなくていい。

最近のマイブームはTOKYO MXでやっている「水曜どうでしょう」。15年以上前から北海道のローカルテレビが連作している旅番組を、さすがのMXが目をつけて流しているもの。大泉洋と相方の鈴井氏しか出演しない学生旅行みたいな珍道中をえんえんと綴ったホームビデオ仕様の作品群なのだが、最初に見た最新作のアフリカ編はとても良かった。アフリカのサバンナなど動物番組で腐るほど見てきたが、それらとは風景がまるで違っていた。なぜなら大手テレビ局の番組クルーは獣の姿を撮影しやすいよう乾季にばかり現地に行くのに対し、「どうでしょう」は4月の潤った季節を選び、これまで見たことのない生い茂った緑の中のキリンやライオンを撮っていたのだ。
お陰でサバンナといえば黄色く乾いた草とかさかさした樹木がまばらに生える不毛の大地というイメージだったのが、緑溢れて雨も降る豊かな草原であるという風に刷新された。草が伸びているため確かに動物の姿は見えにくく、映像としては優れていないのかもしれないが、それもまたサバンナの一面であるのだし、出演者は台本がほぼないのでわざとらしいセリフやリアクションに邪魔されずに一緒にアフリカを巡っているような気分になれる。布でできた宿泊所で夜中に周囲を猛獣に徘徊された場面では、思わず笑いをこらえながら息を止めました。画面はまっくらで何も映っておらず、猛獣の立てる物音しか聞こえないというのに、臨場感と本物の恐怖が伝わったのです。作為のない驚きっていいな。えらいぞ北海道テレビ。ナイスチョイスだMX。

映画の話に戻ると、宇宙人が娯楽目的で作られる映画に失望している理由の1つが、予告編で見た数分の映像より本編の2時間の方がつまらないということだ。予告編ではあんなにドキドキしたのに、いざ本編を見てみたら全然ドキドキしないじゃないの。これはどういうわけなのだ、と長らく不満に思っていたら、先日「予告王」なる深夜番組がその謎を解いてくれた。
この番組は映像編集のプロであるPV作家たちに架空の映画のお題目を与えて予告編を作らせそれを競わせるというもので、その時のお題目は「浦島太郎」と「金太郎」。映画の本編は存在しないのでPV作家は必要な映像を自分で作って編集し、煽り文句や音楽を入れるのだが、「浦島太郎」が現代風浦島と乙姫のヌレヌレSMホラーサスペンスになっていたり、「金太郎」がターミネーター風の音楽でスモーク吹いて足から登場したりと、やりたい放題。しかしあまりの画面の迫力についドキドキしてしまうのだ。予告編だけで本編はないというのに、本編を見てみたいと思ってしまう。まさにプロの技である。
かように極めて技術の高い作家の作る予告編であるので、我々が騙されてしまうのも無理ないのである。彼らの技術はつまるところ本編の映画監督より上ということではないのかね。本編は予告編に呑まれてしまっているのだよ。いや、PV作家たちがはりきり過ぎなのか。大した収入にもならず名前も周知されない普段の仕事への鬱憤を、このように数分の予告編に凝縮して詰め込み、著名監督や興行主への復讐に換えているのやもしれぬ。かような歪んだ映画業界の怨念を感知した宇宙人は、その禍々しい作為性を忌避して映画を見たがらないのやもしれぬ、といろいろ妄想が膨らむ良い番組でありました。作為性も歌舞伎くらいまで突き抜けちゃえば、いっそ晴れやかなのだが。
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by hikada789 | 2014-09-16 15:35 | その他 | Comments(0)