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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

算命学余話 #U64 (No.628)

ワシーリー・グロスマンがソ連時代に書き、検閲に引っ掛かって発禁処分となった『人生と運命』全三巻を読了しました。大変な大作で斜め読みできない内容につき時間が掛かりましたが、物語は第二次大戦期のほんの数カ月の出来事を扱っているだけです。そこで繰り広げられるさまざまな立場の人間の個々の人生の様子を詳細に描写することで、人それぞれに善と悪意と無関心があり、それが立場が変わることで180度裏返ってしまうこと、本人の見方も周囲の見方も180度変わってしまうことが、淡々と、しかし恐ろしく描かれていて、千ページを超える大著にもかかわらずサスペンスを読んでいるように次のシーンが読みたくなる、そんなハラハラドキドキの作品でした。
尤も、戦中を描いているといっても活劇はほぼなく、あるインテリ一家を中心にその親族や友人が戦場や疎開地に分散して暮らし、ある者は収容所や刑務所に囚われながら密告したりされたりし、ある者は疎開生活にうんざりしたり光明を見出したりし、軍隊と党には出世の裏に妬みそねみがあり、戦時下で助け合わなければならないというのに嫁姑問題で足を掬われたり不倫をしてみたりと、被害者も加害者もやりたい放題というか、そんな場合じゃないのにそんなことをしてしまう人間の性というか、そうしたものを活写しながらそれこそが人生なのだという冷然としたメッセージが伝わるリアル小説です。
人の人生が勝ち組か負け組かの二色にくっきり色分けできると思っているような人には、読んでもキャッチできるメッセージは皆無でしょう。でもそうではない玉虫色な人の心の動きが、角度を変えるとこれほど色が違って見えるということ、それが他所にいる第三者だから見えるのではなく当の本人一人であっても感得しえる現象であること、そしてそのことに釈然としないまま生きているような人にとっては、大いに共感を覚える慰めと癒しの作品として読めることでしょう。前に紹介した『万物は流転する』とは登場人物がかぶっており、主役と脇役が入れ替わっているので、両方読むと益々角度を違えたものの見方に厚みが増します。スーパーヘビー級ですが、おすすめ図書です。

この作品を算命学余話で紹介する理由は、もちろん算命学の理解の助けになるからです。算命学は陰陽五行の循環思想なので、善悪の区別は論じず、どの人間もどの宿命も善にも悪にもなり得るという前提で組み上がっています。
時々、鑑定依頼人から動転した問合せが来ることがあり、その内容は大抵「誰々が悪い」とか「自分は不当な扱いを受けている」とかいう苦情なのですが、算命学はこうした苦情に対し「そうですね、その人が悪いです」という回答はなかなか出せません。なぜなら「その人が悪い」という見方は一元的であり、角度を変えれば悪いのは別の人ということになるからで、より正しく言うなら誰も悪くはないし、善くもないというのが当たっている。
算命学は多角的なものの捉え方を提示するものであり、そうした立体的な構図の中で問題の解決策を探るのが役目です。だから誰々のせいでこうなった、という申立てを算命学に向かって発しても、本人の満足するような解答はまず得られませんし、鑑定する側としては、まず助言としてそうした依頼人の思い込みを解消することから始めなければなりません。場合によってはこのような算命学の特質を鑑定前に説明し、理解が得られないときは鑑定をお断りするという勇気も必要です。中途半端な鑑定をすると「返し」がありますし、学習者の方には、依頼人が求めているものが果たして算命学の解決法に合致しているのか、事前に判断してから引き受けるという心構えを承知して頂きたいです。

『人生と運命』は登場人物もシーンも多く、一見して相互の関連がなさそうに見えますが、一貫して算命学的な陰陽の押し合いへし合いを描いており、大変勉強になります。
ほんの一部を紹介すると、物語の終盤で主人公の一人であるユダヤ人科学者が、党から睨まれて窮地に立たされます。職場にいられなくなって休職し、家にいればいつ逮捕の連絡が来るとも知れない恐怖の中で、この人物は自分の正義を貫き、破滅を覚悟で謝罪の機会を、逡巡の末に拒絶します。この時職場の誰もがそっぽを向いて孤立無援だったのにも拘わらず、彼は決然として信念を貫いた。しかし大どんでん返しが起こって彼の正義は認められ、職場は手のひらを返したように彼の復帰を歓迎する。彼は人々から尊敬され、高い地位を与えられ、自信を取り戻す。しかしそんなどん底から人の頭の上へと一気に上昇を遂げた彼に、最後の試練が待ちうける。自分と同じように不当な嫌疑をかけられている別の科学者を破滅させるための文書への署名を迫られたのだ。その時彼は、昨日まで味わっていたどん底の恐怖生活の記憶が新しいばかりに、ついさっき得た安全と安定にしがみつき、文書へ署名してしまうのです。
彼は孤立無援で逮捕寸前の、立場の弱かった頃の方が信念が強かった。もしこの頃に同じ文書へのサインを求められたなら、一瞬でサインを拒否できたことでしょう。ところが逮捕の恐怖が解消し、周囲の誰もが彼の味方になった途端、ぐらぐらと頼りなかった足場が強固になった途端、彼の信念はゆらぎ始めた。そしてサインした瞬間から、彼は正義を失った自分自身に苦しむことになるのです。「弱いときの方が強く、強いときの方が弱かった」。まさに逆転の陰陽論そのものです。

さて今回の余話は上述のエピソードに関連して、名誉星と幸福星に係わる局法である「井乱局」と「乱命局」についてです。局法についてはこれまで余話でいくつか解説してきましたが、人体図に出てくる五つの十大主星の相互関係、つまり相生、相剋、比和を取り上げて論じたのが局法です。局法の各名称は殺とか乱とか物騒な漢字が多く使われますが、字面はあまり気にしない方がいいと思います。天中殺と同じで、別にそれがあるから不吉だとかいう意味はなく、問題はあっても対処法もあります。単なる名称と割り切って下さい。

(この続きは「ブクログのパブー」サイト [http://p.booklog.jp/] に公開しました。副題は「名誉星が剋すもの」です。「算命学余話 #U64」で検索の上、登録&柿1山分の料金をお願い致します。登録のみは無料です。)
by hikada789 | 2014-11-05 17:49 | 算命学の仕組 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人