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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

本好きのための物件提案 (No.653)

初詣を地元の由緒ある神社でしたのだが、行列に並んで見上げたら本殿の正面に懸かった注連縄に違和感が。近付いたところで目を凝らすとなんとビニール製ではないか。神社でまさかのフェイク。やめてくれ。有難みが失せるわ。ビニール紐をよったものなので切り揃えた先端部分が静電気で浮き上がり、なんともチープ。前回案内したしめなわ展示に赴いたところ企画者に会えたのでこの点を訴えると、「最近は材料の藁が手に入りにくくて、ベトナムなどからわざわざ輸入してるんですよ。日本のお米は製造過程で藁を裁断してしまうので長い物はないんです。それでビニール製も近年増えてるんですよ」とのこと。勉強になるなあ。展示場には来場客が自分の持つしめなわ情報をイラストで描き込めるコーナーがあるので、宇宙人も筆をふるってビニール注連縄への不満を書きつけた。皆さん、来場の際はご笑覧下さい。お店は結構高価な民芸品を並べるおしゃれな店でした。

更に前回続き。本棚といえばふと思い出したロシアでの生活で、当地のインテリのお宅にいくとほぼ例外なく壁面本棚の部屋があった。家屋が国家所有物であったかの地では都市部に戸建はなく、軒並み集合住宅。めったに引っ越さないから好き勝手にリフォームしていいのだが部屋数までは増やせない。このため書斎がほしくても持てないお宅では居間の壁面を造り付け本棚で埋め尽くし、これでもかと書籍を詰め込むのだ。この風習、地震のない土地だから造り付け家具に転倒防止の意味はなく、万事物不足の社会だったため簡単に手に入らない家具をこのように補ったとも考えられるが、なにより壁を本で塞ぐことによる盗聴防止の意味合いが第一だったのではないかと思われる。お国柄である。
しかし私はいい空間の使い方だと感心していた。こう見えても住宅建設業の社員だったことがあり、日本の家屋の長所短所について一言ある。近頃の新築はマンションも含めてウォークインクロゼットなど横文字のスペースが設けられているが、衣類の少ない私はこんな部屋より書棚を造り付けた部屋の方がありがたいよと常々思ってきた。以前作家の平野啓一郎が取材で自宅を見せていたが、既に結婚して新居のマンションに入っているその書斎は当然本だらけなのに、本棚は背丈ほどのよくある既製品を壁に並べたもので、狭い部屋に占める割合と天井に空いた無駄なスペースがいかにも賃貸ですといった感じで興ざめしたものだ。

既製品の本棚は奥行がありすぎるのだ。単行本のサイズまでならもっと薄くできるし文庫本なら更に薄くなるのだから、規定外の大判本のための収納は別に考えて広く薄くのばす方向へ進化してくれればよいものを。マンションの場合は梁の問題もあって天井まで届く2m越えの家具が設置できないということもあるが、ならば最初から梁のある壁面に収納を造り付けてくれれば空間は無駄にならないではないか。空いた空間はホコリが積もって不衛生なのだよ、とまあ宇宙人は凝った家具やインテリアよりすっきり片付く機能性を重視しているのでかような主張になる。近頃の建売りはキッチンやお風呂の内装が選べるという売りの物件もあるが、それができるならなぜ本好きの顧客のために壁面書棚のオプションを設けてくれぬのだ。溢れるほどの本を所有する人種は家具の色や材質などの興味は薄いのだ。それより一冊でも多くの本を背表紙を縦に並べたいのだよ。どこにあるかすぐ見つけたいのだよ。たとえ天井近くで手が届かなくとも背表紙が見えるのが便利でいいのだよ。奥行のある本棚には結局二列に本を収めるから奥の列は見えなくなるのだよ。我が家のラックは既に三列縦隊なのだよ。いちいち前列を取り出して探すのが面倒なのだよ。スライド式本棚は分厚い上に前列の半分が無駄なスペースになるのだよ。機能性が削がれているのだよ。

もっとユーザーの使い勝手を研究してくれたら本棚も家屋も進化の余地はあるはずだ。宇宙人は提案する。本好きのための建売り又は内装リフォームを。衣類よりも書籍の持ち物の方が多い顧客をターゲットにした充実の壁面書棚。床から天井までを可動棚で隙間なく埋め尽くした耐震リビングや寝室をご提案。可動棚なので薄型テレビはもちろん小物やお写真も飾れます。お好みで扉やガラスもお付けできます(本好きは多分これは要らない)。足りなければ窓周りやトイレにも棚を増やします。クローゼットの奥には見られて困る書籍のための隠し棚もお付けします。こんな物件で中規模アパートを一斉リフォームしたら、本好きや作家や学者が集まるインテリハウスになるのでは。一階はいま流行りの本屋カフェやスタディルームにしてさ。そんなアパートを経営してカフェのマスターをやっている自分を夢想する宇宙人。自分は無理でも誰か実現してくれないかなあ。
本も音楽も今後は電子化が進んで物理的に棚に並べることはなくなるとの意見もあるが、私はそうは思わない。本やCDの中身は確かに情報だが、形としての役割もなくなりはしないからだ。装丁であったり手触りであったり棚に並んでいる風景であったり、その瞬間の思い出や思い入れは形あるものの方が浸み込みやすいのだ。
by hikada789 | 2015-01-06 18:37 | ロシアの衝撃 | Comments(2)
Commented by sma at 2015-01-07 07:50 x
本日は展示へのご来場ありがとうございました!神社のしめ縄問題、どうにかして欲しいですよねー。
ちなみに、ベトナムや台湾から輸入しているのは素材としての藁ではなく、製品になったものです。つまり、しめ縄を綯っているのはベトナムや台湾の方々。補足まで。
Commented by hikada789 at 2015-01-07 18:51
補足痛み入ります。スキマねたが増えました。

by 土星裏の宇宙人