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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

相槌がうるさいのだ (No.829)

普段テレビ出演をしない佐藤優氏が珍しくテレビに出ていたので見入ってしまった。最近対談本を続けて出している山内昌之教授と一緒に「プライムニュース」という生番組に招かれ、珍しくスーツ姿でパナマ文書に始まる昨今の国際情勢を明瞭に語ってくれた。この模様は番組HPでダイジェスト版を10日間限り無料で観られるので、興味のある方は是非ご覧下さい。
マサル&山内の対談本は最近『第三次世界大戦の罠』を読んだので紹介しようと思っていたところだ。その後また両者の対談本が出たようだが、両名とも主義が一貫しているのでどこでどういうテーマで語ろうとも内容に大差はない。とはいえ両名は常に意見が一致しているわけではなく、そのことは互いに認めているが、意見が合わなくても楽しく対談することはできる。互いを尊敬しているからだ。佐藤氏曰く、

「国際的に見て、知識人は二つのタイプに分かれる。第一は英語でいうインテレクチュアルだ。客観的・実証的に高度な知識を持っていて、世界の動きを洞察する力があるが、現実の政治問題や社会問題に関与することから極力距離を置く人々だ。日本だけでなく世界でも大学人はこれが主流だ。第二は、ロシア語でいうインテリゲンチヤだ。客観的・実証的に高度な知識を持つのみならず、その知識を社会のために活かそうとする知識人だ。歴史を形成する上で重要な役割を果たすのはこのタイプの知識人だが、山内昌之氏はまさにインテリゲンチヤ型である。」

こう称賛できる相手と対談できるって羨ましいですね。山内教授は学生時代にイスラム史を専攻していた宇宙人には(面識はないが)馴染みの先生で、今も昔も彼の著書にはお世話になっている。いま流行りのISに限らず、世界全体を見渡した現代社会の病理の経緯を順繰りに考察されてきた方なので、こういう学者とマサル氏がブレンドされるとシビレる化合物が出来上がるのだ。山内教授についてはよく知らない方も多いかと思われるので、『第三次』の中から味のあるご発言を少しご紹介しよう。

――19世紀にオスマントルコから独立した当初のギリシャの税制は、オスマン帝国よりひどい重税で、農民がトルコ領へ逃散する事件さえあった。ギリシャの面白さは、独立の時から他国に依存するのを当然と考えてきた体質ですね。独立後の税収のほとんどが現物納付にすぎず、脱税も普通だったので、英仏の援助が必要だったのは今と変わらない。…古典古代のギリシャ史や文化を引き合いに出してタカリやゴネを正当化する術策だけは凄かった。その逆ギレ感覚は今も健在だ。…私はEU国民でもないのに、なぜか現代ギリシャのことになると不快感が込み上げてきます(笑)。オスマン帝国から独立した国の中でギリシャが一番最低の国のような気がします。武士は食わねど高楊枝とか、清廉に生きるとかいった気概に一番遠い国のような気がする。民主主義の一番悪い面をそのまま露呈した国に思える。

――テヘランの知識人たちは「グローバリゼーションは既に我々が紀元前5世紀のペルシャ戦争以来やってきたことだ。米国が今言うのなら、我々もそれに応えていい。ギリシャはじめヨーロッパと対峙した時に、我々は勝利のうちにグローバリゼーションを実現していたのだ。米国が今更言うまでもないことだ」と満々たる自信なのです。イランはかなり射程の違う時間軸と歴史観を持っていると見なくてはいけない。

――イスラームにおけるISの存在は、19世紀にツルゲーネフが描こうとしたニヒリストにも通じ(『父と子』に言及)、「イスラーム史におけるニヒリスト」ともいうべき極端な若者の疎外形態ではないか。尤も、ISにはロシアのニヒリストが心中で葛藤した人間性否定との相剋さえ感じられません。

――(中国について)19~20世紀に植民地化されていたことに対する怨恨と報復の意識は、革命国家の時代ならともかく、AIIBの主唱者となる金融受益国の今、その被害者意識から脱却しないと本当の大国としては成熟しません。(中国が進めるアフリカ援助では)スーダンでもジンバブエでも沢山(中国人の)犠牲者が出ています。中国人が当地で起こしている問題は、植民地主義の典型的な悪例だという自覚がない。アフリカ人の憎悪は中国人に対する殺人事件にも至っているが、中国にとって中国人労働者が何十人死のうが重要事でないので表に出ない。

――ドイツのAIIB参加は恥も外聞もないものでしたが、必ずツケが回ってくるでしょう。ドイツを米国と比べて善意の持ち主であるかのように考える識者が日本には多いが、間違っています。…福島原発の事故の時真っ先に東京から逃げ出した大使館はドイツとフランスだということを、忘れてはなりません。根本的なところでこの二国は日本にとって信用ならざる所があります(笑)。(佐藤氏もこれに「同意見です」。)

どうです。率直で筋の通った方でしょう。目からウロコが落ちた方は是非番組なり本なりをご覧下さい。なおこのプライムニュース、生番組としては突っ込んだ話やきわどい討論をやってくれるなかなかの番組なのだが、MCの男がヤボでいけない。ゲストの深い話が判っているのかいないのか、やたら相槌が多くて対話のジャマになっているのだ。名インタビュアーの阿川佐和子によれば、「ラジオの時はリスナーには声しか聞こえないので、聞き手は相槌や合いの手を適度に差し挟まないと対話のリズムが取れないが、逆にテレビは映像があるので視聴者は視覚からも情報が得られ、相対的に耳から入る相槌などは極力排除した方が邪魔にならない」ことを心掛けて対話するという。まさにその通りだ。このMC、ただでさえガタイが鬱陶しいのに、相槌くらいスマートにできないものか。更にガタイの鬱陶しいマサル氏だって、話す内容はキレキレにスマートなのだぞ。見倣えなのだ。
by hikada789 | 2016-04-12 17:27 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)