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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

事実は隠され、歪められ (No.844)

豊臣秀吉による刀狩の評価が近年変わってきているそうである。宇宙人が義務教育で教わった認識では、「農民から武器を奪うことで武士の政権に逆らえないようにした」という封建主義の典型例として片付けられていたように思う。しかし最近は研究が進み、そういう動機ではなく、「武士にのみ帯刀を許すことで、警察権を武士に限定しようとした」という意図が定説になってきたというのだ。要するに一般人の日々の生活の安全保障を誰がやるのかといった場合、みかじめ料を払って地元のヤクザにやってもらうのか、それとも税金を払って公務員(=武士)にやってもらうのか、秀吉は当然後者であるべきだと考えて刀狩を敢行した、というのである。
これって今の感覚ではフツーじゃん。封建主義とは関係ないじゃん。警察と軍隊で国を守ろうとする近代国家のありふれた姿じゃん、という話で、どうやら我々の世代が学校で教わった刀狩の認識は、当時の世相を反映して「帝国主義は悪だ」「封建主義は遅れている」という刷り込みを意図的にやった結果だったと云えそうである。「昔はヒドかったが、今はいい国になった」と誰かが皆に思い込ませたかったのだねえ。そのせいで秀吉も悪の一味にされてしまったのだ。気の毒な太閤なのだった。

戦国時代の認識改めをもうひとつ。西日本には有名なキリシタン大名が多数いたが、自然崇拝くらいしかしたことのない宇宙人には、当時の日本人が上から下まであれほどまでにキリスト教に入信したという史実に全く合点がいかずにいた。佐藤優には悪いが、キリスト教ほど異教徒・異端者を迫害して改宗を迫った宗教は他にない、その歴史上の罪科を全部合わせれば、今日暴れている自称イスラム教徒の悪行など数に入らない、というのが宇宙人の見解だ。だから、いかに当時の日本の仏教界が低迷していようとも、よりによって排他性著しいキリスト教にすがるという日本人の心境に納得がいかなかった。神仏そのものを1ミリも信じてない完璧な無神論者だった織田信長の方がよほど理解に易い。

その答えを最近得た。曰く、「キリシタン大名は硝石がほしかった。日本人は種子島つまり鉄砲を分解コピーし自前で作ることには成功したが、火薬となる硝石は国内になく、やむなく南蛮人から買うしかなかった。西国大名はキリスト教に改宗することで南蛮人との接触・取引が容易になった」。
やっぱりなあ。大名も所詮は軍人だから、最先端の武器が欲しいのは当然だ。他国が持っているハイテク兵器を、自分だって国防のために欲しい。でないと戦国の世で生き残っていけない。こうした合理的打算が主原因でキリシタンに改宗したというなら納得できるのである。キリスト教の愛の教えに感動して、なんてちゃんちゃらおかしいのだ。そんなの子供だって信用しないのだ。同時期に信長のようなスーパードライな日本人を輩出している傍らで「キリストの愛」とか信用するのは、よほど学の無い庶民くらいなもので、仮にも一国を支配する大名がそんな甘ちゃんなわけないのである。納得、納得。

しかしここからが問題だ。硝石を手に入れた大名、小名、豪族は、代金を領民で支払った。つまり自国民を奴隷として売り渡していたというのである。その傍証として、当時の倭寇について記載した資料は残っていないから判らないが、倭寇ではなくイエズス会の武闘組織が沿岸の日本人や朝鮮人、中国人をさらっては奴隷としてマカオあたりで取引していたという資料は残っているという。
江戸時代に日本人の出国が禁じられる前に西欧視察等に出掛けた武士たちも、遠い異国で奴隷として酷使されている同胞を目撃し、同じ日本人として見るに堪えない地獄絵だったと嘆いたことを記した当時の文書を取り上げて、徳富蘇峰が日本国史にこの記述を盛り込んだところ、二刷からは検閲に掛かって削除されてしまったそうな。秀吉の刀狩の扱いと通底するものを感じませんか。

宇宙人は余所の国に比べたら日本の文化も国民性も大変好ましいものだと評価しているが、日本の負の側面を指摘するとすれば、まさにこうした部分に色濃く表れるように思う。
ついでに加えれば、宇宙人は「戦争反対」と叫ぶ輩が嫌いだが、その理由もまたこの日本的な暗黒部分にあるように思われる。平和ボケして久しい今の日本に戦争をしたい奴などハナからいるわけがないのだ。なのに「戦争反対」と叫ぶ者たちは自分だけが正しくて、自分と同じ価値観でない奴は悪だと単純に色分けしたく、思慮深く慎重に構えて黙する人々を悪役にしては、鬼の首をとったような態度でおのが正義を誇示し、その自分に酔っている。秀吉の刀狩の歪んだ理解と、キリシタン大名の改宗理由の隠匿、徳富蘇峰の時代の検閲、戦争反対のシュプレヒコール。みんな繋がっているのだ。
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by hikada789 | 2016-05-24 19:08 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)