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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

ホニャララを極める (No.850)

舛添都知事の公金横領事件を都知事に味方する立場の弁護士に表現させると、「違法でないが不適切」ということになるらしい。変な日本語だ。「世界で最も〇〇なものの1つ」という訳語表現と同じくらい辻褄の合わないフレーズだ。知合いの弁護士によれば、法律とはもともと常識をベースに作っているものなのだそうだ。「不適切」とは「非常識」ってことなのに、これが「違法でない」ということは法律そのものが非常識ということになるではないか。国民よ、なぜここをもっと突っ込まぬ。それほど日本語読解力が落ちたのか。
尤も、宇宙人は法曹界の人間をハナから信用していない。法律を盾に活動する人々は自分に正義があると自負している種族なのであり、いつの世も答えの出ない議論の的である正義の正体について深く考える習慣のない人たちだと宇宙人は認識している。友人であってもそうである。
先日、3.11以来「嘘つきジャーナリスト」とレッテルを貼られてきた上杉隆氏の汚名が遂に晴らされたことを祝う会とやらが催されたそうだが、参加メンバーがすごい。宇宙人は著名な政治家を崇める気はないけれど、上杉氏の報道が正しく、東電や政府が真実を知られたくないばかりに弱い一記者を嘘つきに仕立て上げたという話には信憑性を感じていたので、彼の汚名返上を祝う会に集った面々には真実との親和性を感じて、今後はその発言に耳を傾けてみようと思う。一方で、上杉氏がまだ嘘つき呼ばわりされていた頃、友人の弁護士は彼を蛇蝎の如く嫌ってその名を耳にするのも汚らわしいといった態度を見せていた。今後はこの友人との付合い方を変えようと思う。法曹はある特定の秩序を司ってはいても、真実を扱ってはいないのである。

俗世の些事で耳が汚れたので、ここはロシア文学に浮世の彼方へ連れて行ってもらうとしよう。カネともウソとも無縁なロシア文学は学術研究発表会を無料で公開してくれている。今回は早大の立派な建物に赴き、各大学の院生の論文発表を拝聴した宇宙人。途中から入室したので前半は聴き逃してしまったが、後半へいくほど難易度の上がる発表内容で、その浮世離れ具合を示す論文テーマは以下の通り。

◆北京宣教団とイアキンフ・ビチューリン
◆画家イリヤ・レーピンの滞仏期作品を再評価する試論
◆フロレンスキーの天動説~無限と不連続性を中心に~
◆ロシア語名詞句の統語構造と名詞句内の要素の語順
◆現代ロシア語におけるモダリティとアスペクトのカテゴリーに関する一考察:可能性のモダリティと体のカテゴリーの相関関係について

…って、もはや文学は一つもないではないか。いやいや文学については前半で論じたのであり、後半はキワモノが勢ぞろいしただけなのだ。特に最後の3つはもうだめだって感じで、宇宙人は終始ニヤけて聴いていた。
宇宙人も現地でロシア語文法を学んだ者として、話が全く見えなかったわけではない。可能性のモダリティというのは英語でいうcanやable表現のことで、ロシア語にはバリエーションが沢山ある。中でも「~ないわけではない」といった二重否定、複数否定文ではどのような文法規制が見られるかというのを統計的に分析した研究発表は、私が現地の大学で学んで今も覚えている文法規則にも多くの例外があったことを知る新たな発見となった。とはいえこうした統計分析に人生を懸けている学者が大真面目な顔で「ホニャララせざるを得ない」と連呼している姿には、毒気を抜かれる思いであった。

しかし何と言っても極めつきは「フロレンスキーの天動説」で、天動説といってもガリレオ裁判の時代ではなく、フロレンスキーは20世紀の人である。帝政末期のロシア学術界は心身ともに宇宙に飛び出すような飛躍発展を一瞬見せたのだが、その時代に新思想を閃いた数学兼哲学者フロレンスキーは『幾何学における虚数性』を著し、地動説を否定して天動説の復権を主張した、そうである。あう、もう解説しているだけで頭がホニャララに。それでも宇宙人が居眠りもせず興味深くこの発表を聴いていられたのは、やはり東洋的な陰陽思想があちこちに見受けられたからだ。たとえばこんな:

「フロレンスキーは、実数と虚数を平面のおもて面と裏面として解釈している。実数の領域と虚数の領域を視覚的に表し、両方の領域が共にあって初めて一つの全体を成すのだということを示すことが、『幾何学における虚数性』の狙いである。」

こういう話は算命学者は得意だが、更に話が以下のように進んでいくと…

「宇宙は地上的領域と天上的領域から成る。ダンテの『神曲』に従えば、宇宙は閉じた非ユークリッド空間であり、これはアインシュタインの一般相対性理論の帰結と一致する。」
「フロレンスキーによれば、総じて水晶天、「天空」のあるプトレマイオスの宇宙体系においても、すべての現象はコペルニクスの体系下と同じように起こるはずであるが、[プトレマイオスの体系には]良識と地上や地上的で真に信頼できる経験への忠実さという長所と、哲学的知性との調和があり、幾何学にもかなっている。」
(いずれも細川瑠璃氏レジュメより)

如何です。かように浮世から逸脱した宇宙体験が無料で楽しめるのがロシア文学会なのであります。定期的に早稲田や東大で開催されているので、興味のある方は検索下さい。いやあ、今回はホニャララ度高かった。脳みそグンニャリなのだ。
by hikada789 | 2016-06-07 13:31 | ロシアの衝撃 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人