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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

本物の文学を本物の革で包む (No.907)

怒涛の三週間が終わった。カネはなくともヒマはある宇宙人ライフを満喫していたところ、11月中旬を過ぎて急に仕事が舞い込んで来た。珍しく連日のロシア語仕事で、六日間現場に詰めていたのだが、この間に予定していたクラフト教室をキャンセルしたため、12月の展示即売会に出品する作品の制作進捗が大幅に遅れてしまったのだ。宇宙人はベーシックなクラフト道具は揃えているので自宅でもある程度進められるが、染色やコーティング剤の類は持っていないので、この行程だけはなんとしても教室で仕上げなければならなかった。
月一回のおしゃべりにも加わらずに無言で塗りまくる宇宙人。へとへとになったところに先生からコーティング剤を小瓶に分けてもらい、家に帰って再び塗りまくる宇宙人。乾かしている間に友人の通勤かばんを裁断する宇宙人。乾いた鏡板シリーズを縫って仕立てる宇宙人。終わったら通勤かばんを縫い始める宇宙人。素人演能会のリハーサルに赴き、待ち時間を利用してかばんの持ち手を無言で縫い続けるナゾな宇宙人。完成した鏡板シリーズを展示会場に持込み、飾りつけを手伝う宇宙人。帰宅してペルシャ・シリーズを縫製する宇宙人。日舞用扇袋を友人に届ける宇宙人。その足でペルシャ・シリーズを展示会場に届ける宇宙人。帰宅して通勤かばんに取り組む宇宙人。忘年会に赴き完成したかばんを手渡す宇宙人。翌日、展示即売会の撤収に参加する宇宙人。更に翌日、演能会本番に参加し、打上げ会場で革グッズを販売する宇宙人。同時に次の注文を受ける宇宙人。バブーシュ? バブーシュかい? 確か図書館に型紙のついた指南本があったような…。

目を覚ますとお日様が高いところに。疲労したのだね。三週間で半年分働いた気がするよ。クラフト作品はパスケース、ピアスケースに続き高額な扇袋まで売れたし、増産したソフトレザー扇袋も売れて、もう一本しか残っていない。増産した三本は撮影するヒマさえなかった。売れ残った作品は晴れてわが所有物となり、早速スリッパを履いている。本革はいいねえ、パタパタ音がしなくて。新書カバーは今入れる本がないので手帳を入れたところ、急に高級感が増したし。
ちなみに文庫本カバーはクラフト用タンローの面積がぎりぎりだったため、岩波や新潮は入るが中公や文春は入らないという不良品に仕上がった。いいよ、どうせロシア文学を入れるんだから。この読書の秋はつまらぬ米国文学なんぞ読んだばかりに時間を無駄にしてしまったが、口直しにツルゲーネフの「はつ恋」を神西清訳で読んだ。ああ素晴らしい。なんと香り高い文章であろう。亡びゆく貴族社会の淡い輝きを描き続けたツルゲーネフの筆力もさることながら、神西清の流れるような文体が作品の雰囲気にぴったりはまっている。文学はこうでなくちゃいかんのだ。百円で買った古本だが、能楽堂の松をあしらったブックカバーに包まれて、典雅な気分も倍増なのだ。読書はかくあるべし。

ロシア文学に手を伸ばしかねている方のために、ロシアの芸術的アニメーションの上映会をお勧めします。ユーリー・ノルシュテイン監督特集「アニメーションの神様、その美しき世界」が現在渋谷のシアター・イメージフォーラムで上映中です。手の込んだ昔ながらの絵本を動かしたようなノルシュテイン作品は、いずれも気の遠くなるような手間ひまをかけて制作され、それは見ればすぐに判るし、見たら忘れられない(ストーリーは忘れるが)。キャラクターはいずれも微妙に歪んでデフォルメされているのに、なぜか全体の調和がとれている。そして動きがやさしい。どのシーンも絵になる。ロシアならではの感性が子供の目線で堪能できます。全国で順次公開。
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by hikada789 | 2016-12-14 21:35 | ロシアの衝撃 | Comments(0)