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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

ノンフィクションなら文字数を (No.938)

台東区が今の名称になってから何十周年記念とかで、区内の朝倉彫塑館、書道博物館、下町風俗資料館、一葉記念館の4館が20日(祝)まで入場無料になっており、朝倉と書道に行ってみた。書道の方は書道好きでないと楽しめないコアな展示だったが、朝倉彫塑館は彫刻家・朝倉文夫の好みで立てたアトリエ自宅とあって、池のある日本庭園を囲んだ建物自体が風流で、まるでかつての華族の別荘のよう。もちろんメインの展示のブロンズ像も深みのある人物像から餌を食う猫までと、幅広く楽しめる。もう少し暖かい季節だったら庭に面した畳の部屋にゆっくり腰を下ろして、池の水音と鯉の回遊にのんびり癒されたいところであったが。連休は混むかもしれないがお勧めです。通常はどちらも入館料500円。

帰り道に東京芸大に寄ってみたら、門前に「関係者以外立ち入り禁止」の看板を発見。以前はなかったのに。これはやはりベストセラーとなった『最後の秘境 東京藝大』のせいだろうか。この本は最近友人に貰って読んだが、これを読んだ読者がずかずか上がり込むようになっても仕方ない書き方だったから、やむを得ない措置やもしれぬ。この本はライトノベル作家が書いたノンフィクションで、作家の妻が芸大生だったことから学生たちの尋常ならざる生態について取材した笑える読み物なのだが、評判の割には笑えたのは最初の数ページだけで、後は取材に基づく記録調というか、単調な話の羅列になっていたのが残念だった。ライトノベル作家、文章ヘタね。ありきたりでおんなじ表現何回繰り返すんだ。作家のくせに語彙力ない。宇宙人は普段ベビー級ロシア文学を読んでるから、文体にもリズムや重厚さがないと長く読み進められないのだ。なので後半から読了するまでがしんどかった。世間様はこういう文章を「読みやすい」というのかもしれぬが、宇宙人には読みにくい。

口直しに文字密度の高いノンフィクションを読みたいと思い、奥野修司『ナツコ 沖縄密貿易の女王』といういかにもヘビーなタイトルの大宅壮一ノンフィクション賞作を手に取ったが、こちらは大当たり。終戦を挟んだ裏の沖縄史が活き活きと描かれ、しかもノンフィクションなので話が早い。もたもたした余計な修飾はなしだ。同じ記録調でも取材したネタの分量が違うのだ。1ページに活字がびっしりなのだ。わき目も振らずに読めるのだ。集中しないとどんどん話が展開してしまうのだ。しかも話はアウトローなのだ。終戦直後に焦土となった沖縄で、いけいけどんどんに儲けに儲けた歴史があったのだ。米軍基地に溢れる物資を、横流しては中国大陸へ運ぶのだ。最終的な売り先は共産軍なのだ。もちろんバーターなのだ。仁義なき物流サバイバルなのだ。しかも主役は女親分なのだ。痛快なのだ。文字数が苦にならない方にはこちらがお勧めです。
by hikada789 | 2017-03-18 18:25 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人