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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

年越しの図書 (No.1028)

お勤めの皆さんはそろそろ仕事納めでしょうか。図書館も閉まる頃なので、宇宙人は年末年始の溜め借りをしてきた。ラインナップは以下の通り。
・丸谷才一『笹まくら』
・森鴎外『渋江抽斎』
・オルガ・トカルチュク『逃亡派』
・佐藤亜紀『1809』
・米原万里『終生ヒトのオスは飼わず』
・同『偉くない「私」が一番自由』
・同『オリガ・モリソヴナの反語法』
・小関勲×甲野善紀『ヒモトレ革命』

脈絡がない? 『笹まくら』は米原万里の推薦で、『渋江抽斎』は須賀敦子の推薦。どちらも読み始めているが、所々笑えます。『逃亡派』は東欧文学者の推薦で、ポーランド文学なのだがおそらくロシアと無縁でない異端信仰を扱っている。『1809』は佐藤亜紀の作品の中で唯一笑いの要素の無い作品と覚えているが、もう一度読んで確かめたくなったもの。米原万里の三作品は未読のもの。『ヒモトレ』は鍼灸師の薦めで最近始めた、ヒモをタスキ掛けにして過ごすだけで歪みがとれるというお手軽整体の対談本だ。ほらちゃんと繋がっているでしょう。これで年末年始は退屈知らずなのだ。
なに、毎日が日曜日の宇宙人に年末年始もないだろう? こういうのを「ニートにプレミアムフライデー」って言うのかな。これはわが愛するMX番組「五時に夢中」がやっている「ことわざアップデート」というコーナーで、「豚に真珠」を今風にアップデートしたもの。他にも「犬が西向きゃ尾は東」を「全裸で町出りゃ手は後ろ」とか、「安物買いの銭失い」を「安物国有地買いの小学校失い」とか世相を反映した楽しい言い換えがあった。世間への忖度のない良い番組である。

皆さんはこの冬休みはどんな読書をされますか。No.1025で紹介した米原万里の特集雑誌には、1998年の米原氏とオペラ演出家ボリス・ポクロフスキーとの対談が掲載されています。ソ連崩壊に続く資本主義の導入で社会が激変しても、なお芸術の力や役割について揺るがぬ信念を持ち続けるソ連仕込みの芸術家の意見は、20年経った今聞いても全く遜色ありません。こういう読書を是非年の始めにしてほしいものです。少し抜粋します。

――(ソ連崩壊後の体制の変化によりイデオロギー上の制約はなくなったが)ポルノや暴力礼讃をやってもよくなった。でもそういう「自由」を僕はあまり認めたくはない。つまりすべてが「商品」として扱われ、ただ「売れればいい」という精神で、末梢神経を刺激するような下劣で物欲しげな作品を量産していくことに、とても抵抗を感じます。そんな風潮が荒れ狂う中で、情緒とか良心、正義といったよき「センス」を守っていくのはとても難しくなってきました。
…ソ連時代のように俳優が俳優業で食べていける境遇ではなくなったが、切符の売上収入はあてにしていません。あてにしようとすればもっと高くしなければなりません。するとそれだけのお金を払える人たちに合わせて、作品の質も変えなくちゃならない。自分たちの意志を曲げて、裸の女性を登場させたりしてね。でもそういう金持ちたちは別にモーツァルトやツルゲーネフを聴きたい、観たいとは思っていない。趣味のいいものを見ようとする人たちは、大抵貧しいのです。そういう人たちにこそ来てほしいので、切符は高くできない。…俗悪低級に走るのは簡単です。
…オペラはじめ芸術作品そのものに「美」があるわけではなく、「美」は人間生活の真実の中に、人と人との関係にあるのです。その神髄がオペラはじめ作品に表現されているのです。それをつかみとり、人々に伝えていくこと、魂の深奥のところで感動させること、それが僕たちの仕事なのです。――

こういうセリフを日本の芸術家なり文人なりに吐いてもらいたいものだと、思い続けてやはり20余年が経ってしまったよ。
by hikada789 | 2017-12-28 20:13 | 宇宙人の読書室 | Comments(0)