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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

口頭試問で知性を量る (No.1120)

私が日本語指導しているロシア人の子に読み書き限定の学習障害の疑いがあり、特別支援学校の教諭が呼ばれて話をした。一般に欧米人は学習障害が多く、10-15%もいるのでそれほど大ごととは捉えないのだが、日本人には少ないので、ひらがなを覚えられない小1はこのように大人たちを走らせるのであった。日本人に少ない原因は、おそらく伝統的に日本人が知的障害を忌避して隠匿したり、そのような子供が成人しても結婚できず遺伝子を残さなかったりしたためと推測されるが、特別教諭と話していてもう一つ気付いた。
ロシア・東欧では学校の試験は面接で、ペーパーテストは行わない。普段の授業や宿題で担任が生徒を厳しく査定しているので、筆記試験は今更必要ないのだ。その代わり面接試験では、口頭でその場で正しく物事を相手に伝える能力が試される。質問の意味を理解できなかったり、答えを知っていても相手に判るように説明できない生徒には、低い評価が与えられる。コミュニケーション能力のない詰め込み式ガリ勉は不合格というわけだ。こういう試験方式なので、極端な話、読み書きできなくても試験をパスすることができるし、更に裏を返せば、口達者な人間ほど評価が高くなる。欧米人が日本人に比べて口数が多いのは、こういう価値観の違いも要因かもしれない。しかし日本人にとって、寡黙が美徳と評されても、読み書きできないのは致命的だ。漢字を満足に読めない大人はバカ扱いされても文句は言えない。それくらい日本文化は視覚と知性の結びつきが強いのだ。
ロシアについて言えば、標準的なロシア人は実によくしゃべる。話に中身がないこともしばしばだが、その人の知性を量るのに言語力が査定の筆頭に上がる。今でもかの国では、最も頭の良い学者といえば言語学者なのである。数学者や物理学者はその次だ。そして今も昔も、ロシアでは詩人の地位が高い。詩の原点は即興詩なので、読み書きではなく口頭の世界だ。その場で当意即妙の詩を作れる人は知性の優った人として敬われるので、インテリは詩を作りたがる。一方日本では、詩を作ってますなんて言ったら中高生のラブレターを連想して笑われるのがオチだし、短歌や俳句だったら趣味としては認められても、物理学者に匹敵するほど知性が高いという評価には繋がらない。文化が違うのだ。
そんな異国文化事情のわかるロシア芸術イベントのお知らせです。

(1)第2回ロシア映画祭 in 東京
去年の第1回の様子を当ブログで紹介した時は、字幕の和訳がひどい出来だったとお伝えしたが、今回はどうであろう。無料ですが事前予約が必要。10月19日(金)~25日(木)連日19時開演。一日一作品で、いずれもここ2-3年の新作。場所も日替わりで、渋谷ユーロライブ、いきいきプラザ一番朝カスケードホール、ロシア大使館付属学校コンサートホールの三カ所。

(2)ロシア絵画の至宝展~アイヴァゾフスキーからレーピンまで~
帝政ロシアが誇る正統派国産絵画の展示会。アイヴァゾフスキーはわがお気に入りの画家で、光の透き通る波浪や海岸風景を得意とした。英国のターナーに似た画風だが、アイヴァゾフスキーの方が画面が大きく壮大です。八王子の東京冨士美術館にて12月24日まで。

by hikada789 | 2018-10-17 15:27 | ロシアの衝撃 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人