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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

ヴ/ナ・ウクライーニェ (No.1194)

近年ロシア語事情。ロシア語話者の方には周知の通り、ウクライナという国名に場所を表す前置詞をつける時は、国名にも拘わらず例外的にヴではなくナをつけるのが正しい文法であるが、近年敢えてヴを使う傾向が生じているという。原因は政治的なものだ。ソ連崩壊と同時に独立国となったウクライナは、2014年のクリミア併合に象徴されるようにロシアとの関係がぎくしゃくしている。そもそもウクライナという固有名詞自体がロシア語では「辺境」という意味なので、その他の外国の名称と同列扱いできず、それがこのような文法規則に現れていたわけなのだが、もはや「ロシアの辺境」という見方が相応しくなくなった今日では、その他の外国名と同様に前置詞ヴをつけて「ヴ・ウクライーニェ」とすべきだという機運が高まり、実際の会話などでは既にあちこちで使われているという。
とはいえ言語学の世界ではまだ正式な文法として認可されたわけではなく、公式文書においては必ず「ナ・ウクライーニェ」と記載され、ヴを使ったら訂正される。試験の解答でもヴを使ったら減点だ。プーチンも演説の時は必ずナを使っているが、これは嫌味も入っているかもしれない。最近のウクライナでは、プーチンの前では蛇に睨まれたカエルのように震え上がっていた商人大統領ポロシェンコが選挙に敗れ、新たに芸能人が大統領に選出された。プーチン親分は芸人相手にどのような態度を示すであろうか。プーチンはインテリだから、少なくとも文法的に間違いである俗語「ヴ・ウクライーニェ」を使う機会はやってこないであろう。

ロシア文化関連イベントのご案内です。
(1)映画「ホワイト・クロウ~伝説のダンサー~」
ソ連時代の伝説のダンサー、ルドルフ・ヌレエフの伝記ドラマ。本物のバレエ・ダンサーが踊り、エルミタージュ美術館やルーブル美術館で撮影したというから、見るだけでも価値のある眼福映画。5月10日(金)から渋谷シネクイント他でロードショー。

(2)モルドバ共和国写真展「人と季節」&「ODA」
JICAの無料展示イベント。モルドバも旧ソ連の一辺境国だったが、ソ連崩壊後は独立して、残念だがほぼ経済破綻国家。『シベリアの掟』の著者ニコライ・リーリンの出身国で、この小説を読むとモルドバの実情がよく判る。しかし写真展ではもっとのどかで素朴な被写体を並べているらしい。5月16日~31日、JICA市ヶ谷ビル2F展示スペース。

(3)ミキーツキー・リサイタル
テノール歌手ワレーリー・ミキーツキーのリサイタル。プッチーニの有名どころのオペラのアリアや、ラフマニノフ、チャイコフスキー作曲のロマンスを披露。6月25日(火)18時半開演、武蔵野市民文化会館小ホール。6月27日(木)18時半開演、札幌市教育文化会館小ホール。当日券3,500円。

(4)国立モスクワ音楽院室内合唱団
アカペラが魅力のロシア合唱団の演奏会。6月27日(木)18時半より埼玉会館ホール。6月28日(金)18時半より日経ホール。7月1日(月)18時半より神奈川県民ホール。7月2日(火)14時より武蔵野市民文化会館ホール。全席指定3,000円。

by hikada789 | 2019-05-11 14:43 | ロシアの衝撃 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人