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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

北斎と広重比較展 (No.1484)

 江戸東京博物館で開催中の『冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重』展を見て来た。両名は共に日本各地の風景シリーズで有名だが、今回の企画はその風景画を大量に並べて比較するというもの。宇宙人もこれら版画を印刷や映像では何度も見てきたが、実物の版画に顔を近付けて凝視する機会は珍しい。折しもコロナ禍で来場客は少なく、ガラスカバーで保護された貴重な版画を舐めるように鑑賞することができた。いや、宇宙人は老眼が進んでいて、眼鏡を外して肉迫しないと細かいものは見えないのだよ。

 そこで判ったのだが、まず北斎の人物画は手足が筋肉質であること。江戸時代の浮世絵師は皆このような筋肉スジをはっきり描く絵師ばかりだと思っていたが、それは北斎の絵が有名で露出が多いからであり、広重の描く人物画の手足は細くてまっすぐだと知れた。現代の漫画家にもいますよね、筋肉ムキムキの絵が好きな人。北斎はこの系統だったのだな。これが嵩じると、ルネッサンスのミケランジェロのように、老人も赤ん坊も天使も等しくキン肉マンという気味の悪い聖堂画になる。宇宙人はボディビルダーのような筋肉過剰の体は好きでないので、好みとしては広重派なのだが、でも広重の描く脛は棒のように凹凸がなく、やはり生命感のある手足は北斎だという印象だった。

 もう一つ気付いたのは、風景画に添えられる人物像(主に男性)の顔が、北斎は「整ったブサイク顔」なのに対し、広重は「ランダムなブサイク顔」であることだ。整ったブサイク顔というのは、V字彫刻刀でひと彫りしたような楔形で両目と口の三点を描いたかのような、画一的な庶民顔のデフォルメという意味。どの顔も両目と口の三点が同じなのだよ(もしかしたら北斎の癖ではなく専属彫師の癖かもしれないが)。一方広重は、やはりブサイクな庶民顔を描いているが、それぞれ違ったブサイクなのだ。いやもう本当に色んなブサ男である。女性はうりざね顔で統一されているのに、この差は何。お蔭で宇宙人は、もう脇役男子の顔面を見るだけで北斎か広重か判別できるようになった。素晴らしい展示企画ではないか。

 他にも、米粒サイズの人物が蟻の行列のように街道を行く様子も、顔を近付けなければ判らないほど小さいのに、あっちを向いていたり猫背だったり、見上げていたりするのが判る画力に驚嘆したりと、色々見どころ満載であった。枚数が多いので全部じっくり見ていたらすっかり草臥れてしまったよ。会期はあと一週間ほどだが、コロナ規制の緩和で予約すれば入れるので、皆さんもすいてるコロナ禍ならではの新たな発見を探しに是非お越し下さい。

by hikada789 | 2021-06-12 10:14 | その他 | Comments(0)

by 土星裏の宇宙人