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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

宇宙人のキルギス滞在はボランティアという扱いである。食事付きの住居が無料で提供され、給料は現地の職員と同じ条件で支給される。この国の平均月収はざっくり日本の1/10である。当地の物価は安くていくらも出費を強いられないのではあるが、節約して給料を貯めたところで渡航の往復航空券を買えばチャラか、やや赤字で終わる。そうだよ、航空券は自腹なのだよ。そんな一文の得にもならない条件でなぜ引き受けたのかというと、宇宙人が好む条件が付いていたからだ。それはロシア語とキルギス語の無料授業である。
宇宙人は既にロシア語を使って仕事をしてきたが、ネイティブ並みに流暢というほどではない。ロシア語文法は複雑で、ロシア人言語学者にさえその知悉には「終わりがない」と言わしめている。モスクワ留学時には優秀な指導者に恵まれ、その文法の何がどう複雑なのかを体感することができたが、習得はほんの一部に留まり時間切れとなった。従って、ロシア語学習は専門家の指導を受けられさえすれば、学ぶほどに上達が期待できるのである。そこに終わりはないのだから。

一方、キルギス語はトルコ系言語に属し、日本語と同じウラル・アルタイ語族である。文法は近く、単語と基礎文法を押さえれば比較的習得は容易だ。イスラム圏の言語としてはペルシャ語とアラビア語をかじっている宇宙人にとって、トルコ系言語は初挑戦になる。トルコ語を大学で履修しなかった理由は以前に述べたが、平たく言えば、ペルシャと比較して文化的洗練を感じなかったからだ。今回この印象を払拭できるいい機会になるかもしれないと乗り込んでみたが、どうも払拭はできそうにないというのが現在の感想だ。
原因は音楽性である。間もなく入国一ヶ月になるが、キルギス語の響きが好きになれない。母音の種類が日本語より多く、くぐもった音や「ゲ」音、「チャ・チュ・チョ」音が多発する。地理的に近い韓国語に似ているかもしれない。トルコ製ドラマ「オスマン帝国外伝・欲望のハーレム」を見ていた頃はそれほど気にならなかったから、恐らくキルギス語特有の発音なのだろう。しかし残念ながらわが耳には美しい音としては認識されぬ。

総じて宇宙人の耳には韓国語や中国語は卑猥な音が並ぶ言語であって、上品には聞こえない。それでも、例えば知的な人物が物静かに語っている場合や、漢文の朗読などは、卑猥だとは思わないし、上品に聞こえることもある。要するに話し手の成熟度や知性が音声に反映するのである。
この点は日本語だって英語だってロシア語だって同じだ。宇宙人が英語を嫌うのは、恐らく巷間に溢れる英語の多くが知的でないからであり、ロシア語を好むのは、ロシア人が伝統的に文学や社会思想、古典芸術を好んで扱い、それが日本で紹介されてきたため、低俗なロシア語を耳にする機会なく今日に至っているからだ。いや、下品なロシア語というのは実際には世間で相当の幅を利かせているが、お上品なロシア語をモスクワで学んだ宇宙人の耳には聞き取れないのであった。

b0214800_10364806.jpgさてキルギス語だ。多分初動が悪かった。先述の通り、教養のない家庭に下宿することになった宇宙人の耳には、知性に欠けるキルギス語が多く耳に届いている。ラジオでニュースを聞くとそれほど聞き苦しくはないから、多分この家庭のキルギス語が低俗なのだ。下宿の主婦は訛りの強いロシア語を早口でまくし立てるが、その内容もお粗末である。バイリンガルであろうとも、同じ人物の話す内容と雰囲気に変わりはない。いずれにしても、宇宙人の耳はキルギス語を心地よく聴くことができずにいる。第一印象って大事なのだ。
9月から始業した学校の授業はまだ流動的で、自分の担当授業もまだあちこち移動している最中なので、これが落ち着くまでロシア語もキルギス語も授業は始められない。それでもロシア語は自宅でラジオを音楽代わりに聴いていれば聞き取り練習になるし、キルギス語もネットで基礎文法を学ぶことはできる。だから最初はそうしていた。しかし今はロシア語ラジオは聴いているが(こないだトーク番組で男女のセックス観の違いを論じていた。面白かった)、キルギス語入門講座は停滞している。既にやる気が失せている。初動でコケたというわけだ。
キルギスにガッカリしたエピソードは他にもあるが、次回に譲るとしよう。せめてもの慰めに、画像は学校から眺めるアラ・トー山脈。山はいつだって綺麗だ。日本の山も、たとえ山小屋でコケようとも、山が期待を裏切ったことはないのである。

# by hikada789 | 2019-09-20 11:59 | 宇宙人@キルギス | Comments(0)
b0214800_12231854.jpgキルギスの人口の約10%はロシア人をはじめとする旧ソ連諸国の民族やその混血で、大多数のキルギス人ともども公用語であるロシア語で日常をやりくりしている。キルギス語も公用語ではあるが、人口の約10%が使えないので、公文書や街中の表記はロシア語とキルギス語の併記となっている。キルギス人同士の会話は勿論キルギス語であり、ロシア人同士の会話はロシア語、異民族同士の会話もロシア語である。
しかしモスクワでロシア語を身につけた宇宙人の耳には、キルギス人の話すロシア語は訛りが強くて聞き取りにくい。キルギス語自体が抑揚が少なく、日本人には早口に聞こえるため、それがロシア語会話にも反映されて聞き取りにくくしているのだと思われる。ちょうど日本人の話すカタカナ英語のようなもので、どんなに流暢であってもネイティブの発音にはならない。そもそもロシア人のロシア語には独特の抑揚があり、早口ではあっても強調箇所がイントネーションの上下によって予測できるので、ぶっちゃけ話の半分を聞き逃しても本人が一番言いたい部分だけに的を絞れば意味はキャッチできるのである。キルギス人のロシア語にはそれが通用しない。
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両者はメンタルも当然違う。互いにそれを自覚しており、まだ情報収集不十分な段階ではあるが、ロシア人はキルギス人を「アジア的な閉鎖性があってなかなか打ち解けようとしない」とこぼしているし(いや、ロシア人が道ばたで簡単にお知り合いになる習性も度が過ぎているのだが)、キルギス人は長らく植民地支配を受けた歴史から、ロシア人には羨望と、恨みとまではいかない僅かな鬱屈を抱えている。

ソ連崩壊後は自由に出国できるようになったため、キルギスに住むロシア人やドイツ系移民の多くがより豊かな生活を求めてそれぞれの出身国へ帰っていった。上の画像は宇宙人が暮らす田舎町の戸建ての例で、外壁のオレンジ色はかなり個性的ではあるが、二階のベランダ部分や屋根のヘリに木彫りの模様が見られる。ロシア語で「木のレース」と呼び、編み物のレース状の彫刻を家屋の前面に施すロシア人の伝統工芸である。この種の戸建てが町内に立ち並んでいるが、木彫り模様のないのがキルギス人のお宅である。
b0214800_12234205.jpg画像のお宅はかなり綺麗な部類で、もっとしょぼくて老朽化した家屋も多数ある。しかし面白いことに、綺麗で立派そうな家屋ほど「売却」の看板を掲げている。キルギスを去ったロシア人やドイツ人の残した家屋というわけだ。数件ごとに見かける売却看板には悲しい気分になる。最近ではロシア人のみならず、キルギス人自身も海外へ職を求め、成功者はあまり帰って来ないらしい。国内のロシア人と結婚するキルギス人は、子供の教育をロシア語一本に絞るのが流行りだそうで、キルギス語話者は減少傾向にある。

こうした固有の民族文化が消滅していくのを「惜しい」と思うのは、どうやら日本人の特徴らしい。当のキルギス人は平然としているし、なぜ関係のない外国人である日本人が惜しむのか不思議に感じるようである。以前、宇宙人が知り合った中国の辺境出身の女性が、「昔(皇帝の時代)は女性だけが書く女文字という漢字がひと通りあったが、近代化以降書き手がいなくなり、山奥に住む、貴族階級だったある老婆が最後の書き手となった。これを知った日本人研究者が、この老婆が死ぬ前にひとつでも多くの女文字を残そうと聞き取り調査を行っていた」と語っていたが、この中国人女性も「こうした古い文化の消滅を惜しむのは日本人ばかりで、当の中国人は何とも思わないのだ」と言っていたのを思い出した。そんな日本人のノスタルジーを掻き立てそうなご近所の画像(上から「地平線へ伸びる線路」「音もなく流れる小川」「荒野の向こうのアラ・トー山脈」)。

b0214800_12234939.jpgところで、カプースチン先生の曲を練習しようと学校に半ばうち捨てられたピアノを見つけ、音もろくに出ないような有様ではあったが頑張って弾いてみたら、守衛さんがいつの間にか後ろで聴いていた。大変な感激ぶりであった。いや、ピアノはひどい音だし、私の技術も拙いし、すごいのは作曲したカプースチン先生だよと言ったが、守衛さんは首を振って、泣き出さんばかりに握手をぶんぶんするのであった。この人、名前はキルギス風だが風貌は明らかにロシア系で、ロシア人の芸術に対するこの種の感激ぶりには見覚えがあった。文化活動の少ない田舎に特にありがちで、ほんの僅かな「本物」の芸術に触れただけで過剰なほどの衝撃を受ける人をたまに見かける。ちなみに守衛さんが感激したほんの僅かな部分とは、カプースチン先生のピアノソナタ第一番の、四楽章のイントロ部分である。ここは宇宙人がノーミスで弾ける数少ない箇所であった。
守衛さんは授業のない土日も常在しているので、いまは工事中の離れの部屋が整ったらそこにピアノを移すから、また弾いてくれと言ってくれた。これがロシア人特有の「道ばたでお知り合い」の好例である。人の素直な感激というのは、なかなか清々しいものである。こうした文化芸術への反応は、キルギス人には見られない。

# by hikada789 | 2019-09-17 12:25 | 宇宙人@キルギス | Comments(0)
ZOZOTOWNの成功により長者番付に躍り出て一躍有名人となった前澤友作社長が、自ら創設して育て上げた会社を売って辞任しました。私は経済にも芸能界にも関心が薄いので、彼の資産総額やら会社の売却金額、女優との交際などには興味がありません。
しかし数年前にその半生を特集した経済番組を見た時、彼は元ミュージシャンであり(バンドのドラマー)、その関係でレコードやCDの輸入事業を始めたのが実業界へ足を踏み入れるきっかけだったと聞き、その後のアパレル通販業界での躍進を考えると随分かけ離れた人だったのだと知りました。

そして、その番組では当時の最新情報として「ZOZOSUIT」を新規事業として紹介していたのですが、その時の彼の言葉に違和感を覚えました。というのは、まだ音楽をやっていた頃の前澤氏が学生時代に早々に将来設計からサラリーマンの道を外したのは、毎朝通勤電車に乗る彼らの顔が疲れきっていて魅力がなかったからだと言っていたからです。
その彼が開発を進めるZOZOSUITはセンサー付きボディスーツで、センサーによって精密に体のサイズを測り、その情報に基づいた服をカスタマイズするというものですが、その主たるターゲットはサラリーマンのスーツでした。市場は大きく、成功すれば巨大な利益を得られます。

私の印象では、学生時代の彼のサラリーマンに対する感情は憐憫よりも嫌悪や軽蔑に近く、そんなお気の毒でイケてないサラリーマンに対して自分のイチオシのアイデアであるZOZOSUITを提供し、今よりカッコ良くしてあげましょう(サイズの合った服というのはそれだけで見栄えがします)、といった上から目線の態度が気に障りました。営利目的とはいえその動機が非道義的で、辻褄の合わないもののように感じられたのです。同じ実業家でも、ロケット事業に大枚をはたいている堀江貴文氏の方が清々しく、スケールもずっと大きいと、その時思いました。そしてこの人物は人間としては大成すまいとも思いました。

そんな前澤氏が破竹の勢いだったZOZOを突然のように売却したので「それ見たことか」と思ったのですが、一部では既に傾き始めたZOZOを高額で売却できて幸運だったという意見もあり、賛否は分かれています。例によって私は売却額の是非については関心がありません。関心があるのは、彼の急激な躍進と凋落、転身やその行動原理が宿命に出ているかどうかです。
というわけで、今回の余話は前澤友作氏の命式を眺めつつ、曲直格という格法に言及します。曲直格は非常に珍しい命式なので滅多にお目にかかれませんが、条件を一つ二つ欠くくらいの準じる命式はたまに見かけます。前澤氏はそれに当たっているので、まだ存命中の人ではありますが、例題として取り上げてみます。

(この続きは「フォークN」と「パブー」に公開しました。副題は「曲直格に準じる事例」です。「算命学余話 #R107」で検索の上、登録&マサラティー1パック分の料金をお願い致します。登録のみは無料です。なおブクログのパブーは2019年6月末で閉店予定でしたが、運営会社を変更してサービスが継続されることになりました。7月からフォークNのみに掲載していた新規記事は現在パブーでも再掲載し、今後は双方で購読できます。)

# by hikada789 | 2019-09-15 14:17 | 算命学の仕組 | Comments(0)
ご本人の許可を得て「あなたの山水画」を掲載します。ご協力ありがとうございます。
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1961年10月21日生 女性の山水画
丁 戊 辛
亥 戌 丑
晩秋の山岳を背景に田園には小川が流れ、ほとりには野火が見える。
【解釈】
野火のあなたにとっては土性の多い風景なので、あなたから恩恵を受けている人が大勢います。山岳は兄弟や子供、家系であり、田園は母親です。しかし炎であるあなたの燃料となる木材を欠いているため、あなたは粉骨砕身してやや疲れ気味です。その影響もあって、常人とは異なる不思議な人生を歩みます。
芸術や表現の世界で活動するのに適しています。怠けていたり行動力が発揮できないと心身に不調を来たすので、多少の面倒事は厭わずこなしましょう。

# by hikada789 | 2019-09-13 21:18 | 宇宙人の鑑定実績 | Comments(0)
宇宙人が勤めているキルギスの学校は小中高一貫の私立校で、旧ソ連の国々はこの種の一貫学校が公立でも主流である。1年生から12年生まであり、12年生の時に受ける卒業試験の成績優秀者から大学へ進む。優秀でない者は進学できない。日本の学校のように中学や高校から偏差値の近い生徒が集まる仕組みにはなっておらず、塾や予備校もないが、レベルの高い大学へ進学したい場合は家庭教師をつけたり、場合によっては浪人もあり得るそうである。12年も通う学校が気に入らなければ転校はできる。実際わが私立校でも転出入が激しく、一学年のクラス数もまちまちなら人数もバラバラである。

宇宙人が寄宿しているキルギス人家族の奥さんは、わが私立校の給食のおばさんである。本心ではこの私立校に我が子を入れたいようだが、経済的に無理だという。そのくせ、「私立の子供は家が金持ちだからわがままに育って授業がうるさいでしょう」とか言いよる。宇宙人はこのおばさんが嫌いだ。学がないのに謙虚さがない。人に質問を浴びせておきながら、こちらの回答を全然聞いていない。まだ2週間しか経っていないがもう人間の底は見えた。既に宇宙人にはストレスが明らかなので、なるべく自室に引っ込んで、仕事の邪魔をしないでくれオーラを放って最低限の交流に絞っている。
しかし旦那さんはいい奴だ。学はないが人の悪口は言わない。当国では、男の甲斐性は結婚して子供を作り、自分の両親が健在のうちに家を建ててやることだそうだ。日本もかつては似たような価値観だったと答えておいた。

ところで、年齢に関わらず当地の生徒らは物おじせずに外国人教師に質問を浴びせるが、宇宙人は両目につららを下げて以下のように言ってみた。
「私はロシア語ネイティブではない。君らの質問が心の中から出たものであれば、君らが何を知りたいのか判るから答えることができる。しかし質問が真に興味から発したものでなく、ただ無駄に尋ねているだけならば、私は質問の意味を捉えることができず、回答もしない。このような無駄な質問は相手に対して失礼である。私だけでなく、誰に対しても、このような質問はしてはならぬ。それが対人マナーというものだ。君らはこの意見に賛成か?」
わが担当は小五から高三までだが、どの学年もちゃんと「賛成」してくれたよ。いや助かるなあ。そうなのだ。この辺の価値観は万国共通で、案外子供の方が飲み込み早いよ。大人の方が変なプライドが邪魔してスネたりするからね。この台詞をいつ下宿のおばさんに吐こうかと、邪悪な笑みを浮かべる宇宙人。乞うご期待。

かような有様であるので、宇宙人もそろそろ気晴らしが必要になってきた。知的会話も本もない生活で禁断症状が出る前に、本屋へ出向く宇宙人。わが田舎町に本屋はないので、排ガスバスに耐えて首都へ向かう宇宙人。確かな人の助言を得てお目当ての本を置いてそうな店内を見回す宇宙人。宇宙人のお目当ては当ブログでも紹介したエフゲニー・ヴォドラスキンで、『聖愚者ラヴル』以外はまだ和訳が出ていないからロシア語で読んでみようと思うのだ。
カウンターで店員の兄ちゃんに尋ねるとすぐに判ってくれた。本好きっていいなあ。すぐ探してくれたがあいにく売切れで、注文しないと来ないと言う。前金を払って注文を済ませる宇宙人。兄ちゃんとの会話。
「日本人の方ですか」
「そうだよ、何で判ったの」
「注文票の名前で。日本の作家は村上春樹が人気です。あと三島由紀夫や川端康成など置いてます」
「三島や川端はもう古典だね」
「そう、古典ですね」
「最近は、この国ではどんな作品が人気なの」
「こちらの平積みが売れ筋です。こっちが海外文学、あっちがロシア文学」
いいなあ、こういう会話。ツーカーじゃん。すっかりご機嫌になる宇宙人。ご機嫌ついでに取りあえずザミャーチンの『われら』とアイトマートフの『プラハ』の文庫版を勉強用に購入する宇宙人。注文した本は入荷次第電話で知らせるといってくれたので、また取りに来ることになろう。この兄ちゃんと仲良くなれたらいいな。かように宇宙人のご機嫌取りなど簡単なのだよ。宇宙人は気難しいと思われているが、世の中の気難しい人々も、大体こういう具合に簡単な方法で慰撫できるものなのだ。

# by hikada789 | 2019-09-10 22:01 | 宇宙人@キルギス | Comments(0)