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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

カテゴリ:ロシアの衝撃( 217 )

b0214800_22511141.jpgマルイ錦糸町店1Fに見慣れぬ顔つきのぬいぐるみが並んでいると思ったら、日本初上陸を謳ったロシア製ブランドのハンドメイド猫だった。ロシア猫といえばロシアンブルーだが、どうやらそれを模した色らしく(ほぼ灰色)、デフォルメもロシア的なので一見して猫だと判らない。タヌキかと思ったよ。白ネコバージョンもあったがこちらはまだ猫だとすぐ判る。一体一体異なる服を着せられて、インテリア用のおしゃれな箱入りのものもある。インスタ映えを狙ったデザインらしいが、結構強気なお値段だ。売れるのかな。画像は店頭でもらったチラシだが、興味のある方は「BUDI BASA」で検索下さい。マルイ錦糸町は7月までで、その後浅草に出店するらしい。
ロシア・フェス関連のご案内です。

(1)グレゴリー・セドフ ピッコロ・ヴァイオリンが歌い・踊る
宇宙人が以前から宣伝している、ピッコロ・ヴァイオリンの第一人者セドフ氏が出演する恒例コンサート。今回は合唱団とコラボする。6月18日(火)19時開演。オリンピック記念国立青少年センターカルチャー棟小ホール。当日券4,000円(全席自由)。

(2)ヴィルトゥオーゾ・アムール弦楽合奏団
桐朋学園大学学生有志賛助の無料コンサート。2017年ハバロフスクで創立という新しい楽団。演目は團伊玖磨、バッハ、ラフマニノフ他。7月13日(土)15時開演。両国の劇場シアターX(カイ)。

(3)エイフマン・バレエ
古典ではなく新作で勝負しているらしいバレエ団の公演。演目は「ロダン」7/18(木)~19(金)19時開演、「アンナ・カレーニナ」7/20(土)17時開演、21(日)14時開演。東京文化会館。D席6,000円~。

by hikada789 | 2019-06-13 22:49 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
ロシア語関連の修士・博士論文のテーマはマニアック度が高いが、今回の発表では指小語マニアが登壇した。指小語というのは単語に「小さい・程度が低い」という意味を添える接頭辞や接尾辞をくっつけた単語で、英語のletや仏語のetteに当たるが、ロシア語はもっぱら接尾辞でそのバリエーションは40近くもあり群を抜いている。せっかくなのでカタカナにして列挙してみよう。
<ク、イク、チク、ニク、オク、エク、ヨク、エノク、オノク、エトク、エチク、オチク、ウシク、ユシク、ウィシク、ツ、イツ、オニク、エツ、ィツ、イツ、ウィツ、ウィシェク、ウシェク、イシク、ヨシク、ウルク、アシ、アシク、ヨンク、ヨヌィシ、オンク、ウス、ウン、オン、アン、ウル等>

誰か数えた人がいるのだな。ご苦労様なのだ。しかし指小辞を付ければどれも同じ「小さい」意味になるかといえばそうではなく、40個あるうちでもニュアンスはそれぞれ違う。例えばドーム(家)にイクをつけて「ドーミク」とした場合は、「可愛いおうち」といった意味になるが、イシコをつけて「ドミーシコ」にすると「ボロボロのあばら家」くらいになるので、翻訳には注意が必要だ。
登壇者によれば、こうした指小語は会話に多く、堅い文章ほど出て来ない。女性や子供が多用するとされており、へりくだった丁寧語としても使われている。ロシア語は謙譲表現が発達しているが、動詞表現に加えてこうした指小語名詞も多用することで敬語のランクを複雑に変幻させることができるのだ。外国語といえば英語くらいしか学ばない多くの日本人に、ロシア語の敬語表現の機微について是非知っておいてもらいたい。煩雑な敬語表現は日本語の専売ではないのだよ。とはいえロシア語における指小語使用はネイティブでも技術のいることで、多用しすぎると甘ったるくなり、少なすぎると冷たい印象になる。外国人は安易に使わない方が無難だろう。日本語だってタメ語と報道用語が混ざった文章など聞くに堪えない。

指小語が文章に使われる頻度は全単語のうち1~3%ほどで、女流文学や児童文学になるほど多くなるという。しかしながら、言語はナマモノなので、昨今の若者の間では従来指小辞のつかなかった単語に指小辞を勝手につけるのが流行っているそうである。新語としては認知されていないから辞書には載っていないし、教養ある大人たちは眉を顰めているらしいが、考えるよりも口先が勝手に動く若者らがこうしたトレンドを引き起こすのはどこの国も同じなのだった。しかし外国人にとってはやっかいだ。ロシア語は「てにをは」を語尾の格変化で表すので、馴染みのない指小語が格変化した状態で現れると元の単語が何なのか辿れない場合がある。
そこでちょっと思い出した。宇宙人が中学時代に通っていた塾の国語講師が「丁寧語として頭に「お」をつけた単語は「お」を取れば本来の単語に戻るが、「おはじき」から「お」を取れば意味が変わってしまうよ」と語って笑いをとっていた。あと、外来語には基本的に「お」を付けないが、例外は「ビール」だとも。愉快な講師であった。

by hikada789 | 2019-06-03 16:24 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
映画「ホワイト・クロウ」を見てきた。いや眼福であった。バレエのシーンや撮影場所も見ごたえあったが、意外にも一番の目の保養は役者の顔であった。しかも男ばかり。男の容姿を引き立たせる目的のせいか女優陣は大したことなかったが、主人公のロシア人とそのフランス人の友人が似たような柔和な今どきイケメンであった。ああした中性的で清潔感のある顔立ちは日本ほかアジアでは昔から人気があったが、欧米ではベビーフェイスとか称されて以前は敬遠されていた。馬のような長い顔や髭面ばかりを集めて「男らしさ」を表現したがる欧米人の価値基準にウンザリしてきた宇宙人であったが、ようやく世界の映画界はアジアの美意識に近付いてきたのだな。めでたいことだ。とはいえ主人公が無駄に脱いでいるシーンが多いので、もしかしたら女性客よりもその道の男性客を呼び込む作りだったのかもしれない。当時のソ連バレエ団の西側興行の様子がわかる歴史ドラマとしても楽しめます。お勧めです。
6月のロシア関連行事です。

(1)ロシア文学会研究発表
恒例の修士・博士論文研究報告会。6/1(土)12:45~18:00頃。早稲田大学戸山キャンパス36号館681教室。聴講無料。

(2)マンモス展
ロシア極東サハ共和国で発見されたマンモス及び同時代の冷凍古代生物の企画展示。10年程前も子マンモスの実物が来日して話題になったが、地球温暖化のせいでシベリアの永久凍土の自然解凍が進み、夏場はマンモス取り放題らしい。露天掘りどころか、勝手に溶けた凍土の上に露出したマンモスその他を見つけるだけで世紀の発見になるという。マンモスの牙なんかは手のひらサイズは小さすぎて買い手がつかないから、盗掘者も放置していくという驚きの有様。相変わらずロシアはワケが判りません。日本科学未来館にて6/7(金)~11月4日(月・祝)。当日券大人1,800円。

by hikada789 | 2019-05-31 20:53 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
『いまさらですがソ連邦』で気付いたことがあった。ソ連という国は労働者の楽園という建前で成立したためかつての有産階級の肩身が狭く、その煽りで教育程度の高い人もちやほやされず、よほどの国家功労者でもなければ一介の知的労働者として扱われた。学校での成績優秀者はメダルなどを授与されて名誉はあったが、学歴社会ではないので、それが将来の富貴につながるというわけでもなかったのだ。だから大学や大学院へ進むのは本当に学問が好きな人だけであり、日本のようにろくに勉強もしない大学生や大卒が巷に溢れることはなかったし、塾や予備校といった試験対策のための施設もなかった。あるのはせいぜい家庭教師くらいだ。

ではソ連に受験地獄がなかったかといえば、実はあったことが『いまさらですが』に書かれている。それは一般大学ではなく軍大学だった。かいつまんで言うと、軍人になるには義務教育を終えた後、日本の防衛大学に相当する士官学校に入学し、卒業すると一番下の将校になって軍隊勤務が始まるのだが、このままぼんやり勤め続ければ中佐くらいでキャリアが終わることになる。もっと出世したいなら、勤務しながら試験を受けなければならない。25歳くらいになると軍の大学院のようなものを受ける資格が得られ、ここをクリアすれば将官への道が拓ける。更にその先を望むのであれば、参謀本部大学なるものがあって、やはりここの試験をパスすれば司令官クラスの出世が見込める。

ところでこうした試験に備えるには相当の詰め込み勉強が必要で、軍隊勤務をしながらこれをこなすのはかなり無理がある。しかし各部隊は自分の部隊から試験の合格者を出すことが名誉なので、何とか合格者を出したいと思う。そこで成績優秀者を選抜し、文字通り勉強部屋に缶詰にして受験勉強に集中させる。受験生とはいえ給料をもらっているので当然勤務しなければならないのだが、部隊はこれを免除してでも勉強に専念させる。
このため何が起きたかというと、受験生が行うべき勤務を周囲の誰かが負担するなり、或いは全く欠員にしてしまうなりして、本来の部隊運営が疎かになった。その上、勤務を免除されてきた受験生が出世していくため、実務経験のない司令官が増えてしまい、知識だけが豊富で実践に弱い首脳部が作戦立案するようになった。どうもこの時期がアフガン戦争辺りに当たっているらしく、アフガンのゲリラに苦戦したソ連軍は、その人的消耗と戦費によって結果的にソ連という国を瓦解させるに至ったのだった。尤も、このような軍隊内部の弊害はソ連に限ったことではなく、どこの国の軍隊でも同じだという。日本の自衛隊もそうなのかね。仕組みをよく知らないが。

ところで宇宙人がハタと思い出したのは、学生時代の宇宙人が崩壊直後のソ連をほっつき歩いていた頃のことである。まだロシア語をろくに話せない宇宙人は、道を尋ねたり待合スペースで荷物を見ててもらったりするのに、まず第一に家族連れを探して当たり、次に軍人を探して当たった。理由は安全だからだ。家族連れに悪人はいないし、軍人は頼りになる。特に軍人は階級の高そうなのが良く、頼まなくてもいろいろ親切をしてくれる。ロシア人は大抵親切だが、軍人は奉仕精神に満ちているので、貧乏そうな留学生が危なっかしい素振りを見せるとあれこれサポートを申し出てくれるのだ。軍人特有の特権も持ってるから、普通なら入れない所にも入れてくれたりとか、色々便利であった。ありがとう将校たち。
しかし宇宙人がそうした軍人に恐れることなく近付いて行けたのは、どうやら上述のようなお受験エリートの醸す書生っぽい雰囲気や、荒事に関わっていないデスクワークな坊ちゃん然とした風貌が、警戒心を起こさせなかったからだという風に合点がいった。軍隊は本来は殺人集団なので、士官学校で銃器から体術までの殺人技術は必ず教えている。いかに宇宙人が武道の有段者だろうと彼らには太刀打ちできない。実戦を経た兵士など尚更だ。しかし将校はこうした事情で戦闘能力は備えていても野蛮とはほど遠く、受験のせいか無駄に教養が高い。宇宙人が当地で知り合ったロシア軍人はソ連時代に教育を受けた世代だったが、有名な詩を長々と暗唱したり、自ら詩作したり、楽器を演奏できたりと、何かと高級で浮世離れしていた。帝政時代の軍人貴族そのままだ。そうか、宇宙人は軍人貴族に突進していたのだな。なかなか目の付け所が鋭かった。

by hikada789 | 2019-05-14 21:15 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
近年ロシア語事情。ロシア語話者の方には周知の通り、ウクライナという国名に場所を表す前置詞をつける時は、国名にも拘わらず例外的にヴではなくナをつけるのが正しい文法であるが、近年敢えてヴを使う傾向が生じているという。原因は政治的なものだ。ソ連崩壊と同時に独立国となったウクライナは、2014年のクリミア併合に象徴されるようにロシアとの関係がぎくしゃくしている。そもそもウクライナという固有名詞自体がロシア語では「辺境」という意味なので、その他の外国の名称と同列扱いできず、それがこのような文法規則に現れていたわけなのだが、もはや「ロシアの辺境」という見方が相応しくなくなった今日では、その他の外国名と同様に前置詞ヴをつけて「ヴ・ウクライーニェ」とすべきだという機運が高まり、実際の会話などでは既にあちこちで使われているという。
とはいえ言語学の世界ではまだ正式な文法として認可されたわけではなく、公式文書においては必ず「ナ・ウクライーニェ」と記載され、ヴを使ったら訂正される。試験の解答でもヴを使ったら減点だ。プーチンも演説の時は必ずナを使っているが、これは嫌味も入っているかもしれない。最近のウクライナでは、プーチンの前では蛇に睨まれたカエルのように震え上がっていた商人大統領ポロシェンコが選挙に敗れ、新たに芸能人が大統領に選出された。プーチン親分は芸人相手にどのような態度を示すであろうか。プーチンはインテリだから、少なくとも文法的に間違いである俗語「ヴ・ウクライーニェ」を使う機会はやってこないであろう。

ロシア文化関連イベントのご案内です。
(1)映画「ホワイト・クロウ~伝説のダンサー~」
ソ連時代の伝説のダンサー、ルドルフ・ヌレエフの伝記ドラマ。本物のバレエ・ダンサーが踊り、エルミタージュ美術館やルーブル美術館で撮影したというから、見るだけでも価値のある眼福映画。5月10日(金)から渋谷シネクイント他でロードショー。

(2)モルドバ共和国写真展「人と季節」&「ODA」
JICAの無料展示イベント。モルドバも旧ソ連の一辺境国だったが、ソ連崩壊後は独立して、残念だがほぼ経済破綻国家。『シベリアの掟』の著者ニコライ・リーリンの出身国で、この小説を読むとモルドバの実情がよく判る。しかし写真展ではもっとのどかで素朴な被写体を並べているらしい。5月16日~31日、JICA市ヶ谷ビル2F展示スペース。

(3)ミキーツキー・リサイタル
テノール歌手ワレーリー・ミキーツキーのリサイタル。プッチーニの有名どころのオペラのアリアや、ラフマニノフ、チャイコフスキー作曲のロマンスを披露。6月25日(火)18時半開演、武蔵野市民文化会館小ホール。6月27日(木)18時半開演、札幌市教育文化会館小ホール。当日券3,500円。

(4)国立モスクワ音楽院室内合唱団
アカペラが魅力のロシア合唱団の演奏会。6月27日(木)18時半より埼玉会館ホール。6月28日(金)18時半より日経ホール。7月1日(月)18時半より神奈川県民ホール。7月2日(火)14時より武蔵野市民文化会館ホール。全席指定3,000円。

by hikada789 | 2019-05-11 14:43 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
『いまさらですがソ連邦』なるマニア本が昨年秋に出版され、増刷されている。ソ連崩壊から27年、日本は平成も終わって令和になろうというこの時代、ソ連も冷戦も教科書でしか知らない若い世代のために、ソ連を知る年代の作家と漫画家が挿絵入りの共著という体裁で世に出したものだが、なかなかいい。ソ連の歴史から庶民の生活、軍事情から西側にはない不思議な風習までひと通り、笑いを誘う解説で楽しませてくれる。特に漫画家の視点によれば、ソ連の兵器や機械のデザインは西側にない斬新さで、「可愛く」「カッコよく」見えるらしい。なるほど、今までそれほど注目してこなかったが、言われてみれば単なるレトロを通り越してソ連独特の共通の特徴が感じられる。イラストにすると更にはっきりするのだが、フリーハンドの絵になりやすいデザインなのだ。あたかも子供がマネして落書きできるような。

どこがどう落書き風なのかは本書を読んで理解頂くとして、例によってお時間のない方のために、宇宙人の笑いの琴線に触れたポイントを幾つかご紹介しよう(「註」は宇宙人のコメント)。冷戦時代、米国の宣伝によって必要以上に悪の帝国としてのイメージを広められたソ連は、日本ではよからぬ話ばかりが報道されて、可愛いとかカッコいいとかいう形容詞が使われることはまずなかった。せいぜい芸術分野で深いとか重厚とか言われたくらいで、あとは収容所の恐ろしさとか物資の乏しさとかばかり取沙汰された。本書はそうした暗黒部分にも触れながら、冷戦期には報道されなかった等身大のソ連の実情(その中には陽気な笑いやおちゃめもあった)を回想し、それほど異常な社会でもなかったという客観的歴史観と、やっぱり異常だよというツッコミで、かの亡国の全体像を描き出そうとしている。そしてあとがきでは「全体像を描くなど到底ムリだった」と白状している。態度が誠実だ。

――冷戦期育ち世代なので、ソ連といえば軍事系ニュースのイメージが強いよ。…ソ連兵器は「謎めいている」のが魅力のひとつだったと思う。ネットがないあの当時は謎は本当に謎だった。学生の時にT-72(戦車)をフルスクラッチした時資料が少なくて本当に困ったよ。…こんな具合にソ連戦車に入れ込んだ挙句、戦車擬人化とか始めたらおしまいだよ!(註:日本には戦前の日本海軍艦艇を少女の姿に擬人化したアニメがあり、これをソ連の戦車でやったらこんな感じかというイラスト「ロジーナちゃん」(rodinaはロシア語で「祖国」)が添えられている)

――(史上初の人工衛星)スプートニク1号のデザインは今見てもステキ。ひと目で人工衛星を象徴する形。実際(開発者の)コロリョフが「夢のある形」と指示したそうな。(註:当時宇宙開発競争は米ソでしのぎを削っており、どちらが早く人工衛星を打ち上げるかで開発者たちはきりきり舞いしていたというのに、そこに「夢のあるデザイン」という余計な注文を平気でつけるのがソ連という国の感性であった。西側なら合理主義一辺倒で、性能とコスト以外目に入らないところだ)

――1961年4月12日、ガガーリンを載せたボストークが人類初の有人宇宙飛行に成功します。「笑顔の爽やかな青年」という理由で最終選考に残った彼は、文字通りの英雄となり、世界を巡ってソ連の優位性をアピールしました。(註:ロシア人には「正しいものは美しい」という観念が沁みついているため、能力の拮抗した候補者の中から一人を選ぶ場合に、見た目は重要なのだった)

――米国のように強力な空母を持っていないソ連海軍は大型爆撃機を備え、米国の空母機動部隊に対し大量の対艦ミサイルを発射し、相手の迎撃能力をパンクさせる「飽和攻撃」を目指しています。この一戦の勝負に懸けるという思想は、戦前の日本海軍にちょっと似ていて親近感湧きません?(註:米国がソ連の軍事力を恐れていたのと同じように、ソ連も米国の軍事力を恐れていたという重要なエピソードなのだ。敵は巨大に見えるもの)

――特殊部隊スペツナズで有名なアルファ部隊は、1985年にベイルートで起きたソ連外交官誘拐事件で世界に衝撃を与えた。アルファ部隊は誘拐犯たちにつながる人物を洗い出して拉致すると、頭部と〇×を切断し、その口に〇×を突っ込み、誘拐犯との交渉場所に晒しました。ビビった相手は人質を即座に解放したそうです。以前、ロシアの出版物でその頭部の写真を見てしまいました。マジで怖いです。

――ソ連製品とえいば、品質が悪いというのが一般的なイメージです。中でもカラーテレビは評判の悪い家電製品の代表。「虹色の悪魔」と呼ばれる家庭用スーパーウェポンです。なにしろいきなり爆発して半径5mを火の海にするというから、穏やかではありません。テレビがよく爆発したのはコンデンサーに問題があったからで、火災原因の上位に上がっていました。(ここでソ連時代の実際のポスターの写真を掲げて)モスクワを散策中に見つけた消火器の宣伝用看板。「購入しましょう、火災に備えて!」みたいな文句が書いてある。やはり火事=テレビが一番イメージしやすいらしい。(註:ポスターの絵は勿論、消火器が燃えさかるテレビを消火している図なのだった)

by hikada789 | 2019-04-26 22:13 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
現在上映中の『ユーリー・ノルシュテイン《外套をつくる》』では、もう70歳を過ぎたノルシュテイン監督がなぜ製作開始から30年経った今も《外套》を完成できないのかを、この映画を撮影した才谷監督自ら問いただすシーンがあるのだが、ロシア語話者の耳には聞き方が悪くてつまらぬ応答になっている感が否めなかった(通訳が悪いのではない。通訳も「また同じ質問をくり返しているわ、この日本人は」とノルシュテインに弁明していたくらいだ)。高齢のノルシュテインが《外套》を未完のままこの世を去るのではという心配は判るが、ノルシュテインはソ連時代の芸術家なのだから、もっと内面的な話や人生を仕事に捧げる誠意について突っ込んで訊いてくれれば、興味深い回答が得られたに違いないのに。これだから資本主義出身の映像作家は中身が薄いと言われるのだ。目の高さが合ってない。
ノルシュテインが仕事を再開できないのは、ソ連時代のように資金面での心配なくアニメを作れる環境でなくなったからだけではないのだ。ソ連の社会は厳しい検閲があって自由な表現が制限されていたけれども、それでも人の心に強い印象を残す様々な芸術作品を生み出す環境はあったのだ。価値観と言ってもいいだろう。ソ連崩壊によって資本主義に移行した今のロシアでは、そのような作品は採算が見込まれずに企画段階でボツになる。採算を考えるとハリウッドの如き作っては捨てるような、見世物としての映画しか形にならない。ノルシュテインは運が悪かった。ソ連がまだ元気だった時代に《外套》を完成させておけばよかったのだ。資金面は、今どき流行りのクラウドファンディングでも充分集まりそうな気がするが、製作スタッフの高齢化と世代交代による技術継承の不調はかなり厳しい条件だ。芸術家ノルシュテインは語る。「自分が満足いかないような出来栄えのものは作りたくない。誠意のない仕事などできない」。この種の芸術作品は、ノルシュテイン共々、過去の遺物となるさだめなのだろうか。

時期を同じくして「ソヴィエト映画の世界」特集が同じく渋谷で上映中だが、まだ観たことのない『ミスター・デザイナー』を見てみたところ、エライ不可解な気分で鑑賞を終えた。1988年の作品なのだが、ソ連風のオカルト・サスペンスで、何とも評しがたい。88年といったらソ連末期のゴルバチョフの時代で、かなり検閲は緩くなっている頃だから、それまでより自由な表現ができたということなのかもしれないが、自由過ぎて意味不明だ。ソ連の検閲って結局政権批判さえしなければ何でも通ったってことなのか、よく予算が降りたな、と首を傾げたくなるほどシュールな内容だったが、西側の意味不明シュールとは違ってそこはソ連、妙に重厚だから印象には残る。いや、どうせ重くて意味不明ならアレクセイ・ゲルマンを見ればよかろう。
ともあれ、必ずしも芸術性の高くない作品であっても、やっぱり金儲けとは無関係な作品群を排出してきたのが、ソ連という社会だったのだ。もうあの社会が再び地上に現れることはなかろうから、この種の作品群も絶滅種となるのだろう。人類の可能性の一部を垣間見に、或いは非日常を堪能しに、是非ソ連映画をご鑑賞下さい。

by hikada789 | 2019-04-05 19:21 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
ソ連映画特集「ソヴィエト映画の世界」が上映中です。モノクロのエイゼンシュテインやタルコフスキー作品ほか、カルトからアクションものまで幅広いラインナップ。シネマヴェーラ渋谷にて4月19日まで、1日4本の日替わり上映。回数券はない模様。お勧めはやっぱり映像美を誇る『貴族の巣』かな。近年DVD化されたが、デジタル版なら画像はさぞかし美しかろう。

ソ連といえば、先日若手研究者の研究発表を聴きに行って、1920~30年代のソ連の家族像の激変と揺り戻しについてのネタを仕入れてきた。昨今日本でも珍しくなくなった事実婚やシングルマザー、フリーセックスの容認など昔の価値観からすれば性的退廃と捉えられた事象は、一般にここ半世紀ばかりのおフランス辺り発祥のトレンドとして広まった印象があるが、いやいや百年前のソ連で既に行きつく所まで行っていたよという事実が明らかになった。ざっくりした内容はこうだ。
ロシア革命後の1918年、家族法により教会婚は廃止されて市民婚(役所へ届ける婚姻制度)へと移行したが、これは革命政府が社会主義を進めるために家族のつながりを弱め、家族よりも社会への貢献を優先する市民の育成を目的としていた。(例えば、反革命的な父親を幼い息子が党に密告した有名な事件があるが、そういう行為が奨励されていた時代である。)その後最終的に1927年には事実婚を認める新法が成立するのだが、実はこの年がソ連における性的退廃のピークであって、ここから市民感情は急速に保守へと揺り戻し、性的乱れを糾弾する世相が広まった末、1936年には家族強化キャンペーンが敷かれるという「元の鞘に戻る」結果に至るのだった。

その過程を象徴する文学作品と社会事件はこうだ。
まず女流作家アレクサンドラ・コロンタイの短編小説『三世代の恋』(1923年)では、合法的な重婚や再婚を繰り返す母親に、ある日年頃の娘が妊娠を打ち明けるが、父親が誰かは「多すぎて」わからないと言い、しかも堕胎したいと相談する。つまりこの母親は1920年代という時代を代表する女性像であり、その娘はこのまま行くとこうなるだろうという未来を予測した次世代像を表している。作家の未来予測によれば、次世代は恋愛感情のない性行為を肯定し、性的欲望はあるものの、生殖そのものは拒否するという人工的な生き物になっているということだった。社会主義がやろうとしているのはこういうことだと。

次にセルゲイ・トレチヤコフの戯曲『子供が欲しい』(1927年)。主人公の女性は社会貢献への意欲から、理想的な男性との間に子を儲けることを望む。当時の理想的男性とはプロレタリアート出身者のことなので、健康で三代前から100%プロレタリアートの男性を見つけて、結婚ではなく子供ができるまでの性行為だけを要求する。勿論男性は仰天し、恋人もある身なので拒否するが、結果的に主人公は妊娠に漕ぎ着ける。主人公は男性に言い放つ。「あなた自身はいらないの。欲しいのは精子だけ。後腐れなく別れてあげるし、出産後の養育費もいらないわ。」戯曲は、男性とその恋人との間にできた子供と、男性と主人公との間にできた子供が、数年後の子供品評会で共に賞を獲るというシュールな場面で締めくくられている。
当時の実際の社会では、事実婚やシングルマザーが社会に容認されるようになった結果、案の定というべきか、男に捨てられる女たちが続出し、子供の養育費に苦心する女たちを守るべきだという世論が徐々に高まっていった。また子供に対する無責任なセックス観が、強姦事件を多発させているという声も支持されていった。

このような実際の世相と知識人の未来予測が錯綜する1926年、非常にアウトな事件が起きる。レニングラードのチャバーロフ小道の近くで、労働者学校に通う少女が40人の若者によって集団強姦されるという事件だ(チャバーロフ事件)。世間が騒然となったのは、この加害者たちが全員プロレタリアート出身者だったからだ。プロレタリアート出身者が理想の男性とは限らない事実が証明されてしまった。世間は加害者らの厳罰を求め、通常のレイプ事件は数年の懲役刑で済むところを、首謀者5人が死刑判決を受けたのだが、世論はそれでは収まらず、性的退廃そのものを厳しく監視する方向へと舵を切る。こうしてソ連社会は性に関して再び保守の立場へと戻ることになったのであった。

ソ連は様々な意味で実験国家であったが、性的解放やその保守反動も戦前に経験済みなのだった。結局のところ、性的解放は何ら実りを得ずして保守に立ち戻るのが自然な流れだと、既にソ連が実証している。というわけで、海外から安易に輸入した性的退廃肯定のトレンドは、日本においてもぼちぼちピークを迎えて、世論が、特に女性たちが「もういい加減やめにしたい」と声を上げるようになって、何の実りもなく元の鞘に戻り、性的に堅実な男女を肯定する価値観が復権することが予測されるのであった。

by hikada789 | 2019-04-01 19:37 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
世界フィギュアで三位に返り咲いた元世界女王メドヴェージェワの印象が変わったのは、今シーズンの曲フラメンコに合わせて飾り気のない髪形やメイクにしたせいかと思っていたが、実は今シーズンからヴィーガンになった影響らしい。もしかしてすっぴんだったのか。確かに唇は赤く塗ってはいなかったが。ロシア情報によると、メドヴェージェワは今シーズンから練習拠点を羽生結弦らと同じカナダのクラブに移すと同時に体質改善にも取り組み、今ではすっかりヴィーガンなのだという。ヴィーガンとは、単なる菜食主義にとどまらず、思想的に動物殺生を拒否して動物性食品を摂らず、衣類も動物性の素材を着ないという徹底したもの。
宇宙人も日頃の食事は野菜中心だが、卵や魚はたまに食べるし、会食では肉も食べる。趣味のレザークラフトはもろに動物皮革だからヴィーガンとは言えない。でも肉の代わりに大豆製品を摂るようにして、一日1.5食にしてから、体重は若干減ったまま体調は良いし、食事の時間までの空腹も気にならなくなった。たまに菓子類も食べるが、原材料がシンプルなものほど食欲が止まることが最近判った。袋に入ったスナックや洋菓子のラベルには原材料欄に意味不明のカタカナ添加物が多数並んでいるが、この種のカタカナのない和菓子やシンプルなポテトチップ(というのを最近見つけた)は、お茶うけ程度の分量を摂るとそれ以上欲しくなくなるのだ。逆に言うと、カタカナ物質の多い菓子ほど食欲が止まらない。そういう効果が本来ある物質なのかもしれない。消費者に多く買わせるために。いずれにしても現代人は食べ過ぎにより病さえ発症しているのだから、食欲を適度に止められる食品というのは今後トレンドになるかもしれない。メドヴェージェワのような著名人による効果も悪くはない。でもロシア人はそもそも極端から極端に振れる性質なので、真似をするには注意が必要だ。日本人なら和食を食べていればとりあえず肥満は回避できよう。
春のロシア文化イベントのお知らせです。

(1)ワレリー・ベリャコーヴィチの「マクベス」
「どん底」「ハムレット」「検察官」と劇団東演で演出を続けてきた故ワレリー・ベリャコーヴィチの遺作。3月24日(日)~4月7日(日)、三軒茶屋のシアタートラムにて。開演時間はマチネーもあるので事前にご確認を。一般5,500円(全席指定)。

(2)交響楽団はやぶさ&ストラヴィンスキー
作曲家ストラヴィンスキーの一族であるマリウス・ストラヴィンスキー指揮による演奏会。この楽団は全国の医学生によって発足したもの。演目はグリンカ、ラフマニノフ、チャイコフスキー、ストラヴィンスキーとロシア尽くし。5月6日(月)14時半開演。東京オペラシティコンサートホール。A席3,000円から(全席指定)。

(3)ワークショップ「ポスト革命期ロシア文化のまなざし」
若手研究者による研究発表。3月30日(土)14時より早稲田大学戸山キャンパス36号館6階681教室。入場無料。

by hikada789 | 2019-03-27 11:49 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
総合格闘技団体UFC所属の英国人格闘家がインスタグラムで、ロシアの女性店員が迷惑客をノックアウトする動画を掲載し、絶賛している。この動画はロシアの某店に設置された監視カメラ映像で、レジに並んだ男性客の一人が前に並ぶ男性客をひっつかみ、自動販売機に叩きつけていたが、これを見たレジの若い女性がレジから出て、確固たる足取りで男の前に立ちふさがる。怯んだ様子の男の顔面に右ストレートを浴びせ、すかさず下腹部を前蹴りする女性店員。打撃が効いているのか酔っているだけなのか判別しかねる男性客は、よろけながら女性に向かって文句を浴びせる。ご立腹の女性店員の精確な右ストレートが再び顔面に炸裂し、男はもんどりうってダウン。レジに並んだ客たちは女性店員を称賛し、そのうちの一人は女性に握手を求めていた。愉快なおバカ映像であった。ロシアの女性は日本程度には格闘技愛好人口がいるし、軍隊にも女性兵士はいるので、小顔だからって甘くみてはいけないのだ。

文化文化。ロシアはやっぱり文化だよ。芸術アニメ監督として知られるユーリー・ノルシュテインのドキュメンタリー映画「ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる」が3月下旬から上映予定である。ドストエフスキーが、「我々はみな、ゴーゴリの『外套』の中から生まれた」と称したように、ロシア文学の原点がこの『外套』に詰まっているのだが、ノルシュテインはこの『外套』制作に30年をかけて未だに未完なのであった。その制作過程をつづった本作品と、ノルシュテイン作品を集めた「アニメーションの神様、その美しき世界」を再上映する企画だ。どうせ見に行くからと早々に前売券を劇場へ買いに行ったら、ノルシュテイン描き下ろしのハリネズミのイラストの入ったミニ手ぬぐいがおまけでついてきた。ロシア語の入った珍しい柄。数量限定なのでお早目にお求め下さい。シアター・イメージフォーラムにて前売り1,300円。

by hikada789 | 2019-03-04 14:54 | ロシアの衝撃 | Comments(0)