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土星の裏側

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宇宙人と呼ばれた人達の診療所

カテゴリ:ロシアの衝撃( 208 )

総合格闘技団体UFC所属の英国人格闘家がインスタグラムで、ロシアの女性店員が迷惑客をノックアウトする動画を掲載し、絶賛している。この動画はロシアの某店に設置された監視カメラ映像で、レジに並んだ男性客の一人が前に並ぶ男性客をひっつかみ、自動販売機に叩きつけていたが、これを見たレジの若い女性がレジから出て、確固たる足取りで男の前に立ちふさがる。怯んだ様子の男の顔面に右ストレートを浴びせ、すかさず下腹部を前蹴りする女性店員。打撃が効いているのか酔っているだけなのか判別しかねる男性客は、よろけながら女性に向かって文句を浴びせる。ご立腹の女性店員の精確な右ストレートが再び顔面に炸裂し、男はもんどりうってダウン。レジに並んだ客たちは女性店員を称賛し、そのうちの一人は女性に握手を求めていた。愉快なおバカ映像であった。ロシアの女性は日本程度には格闘技愛好人口がいるし、軍隊にも女性兵士はいるので、小顔だからって甘くみてはいけないのだ。

文化文化。ロシアはやっぱり文化だよ。芸術アニメ監督として知られるユーリー・ノルシュテインのドキュメンタリー映画「ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる」が3月下旬から上映予定である。ドストエフスキーが、「我々はみな、ゴーゴリの『外套』の中から生まれた」と称したように、ロシア文学の原点がこの『外套』に詰まっているのだが、ノルシュテインはこの『外套』制作に30年をかけて未だに未完なのであった。その制作過程をつづった本作品と、ノルシュテイン作品を集めた「アニメーションの神様、その美しき世界」を再上映する企画だ。どうせ見に行くからと早々に前売券を劇場へ買いに行ったら、ノルシュテイン描き下ろしのハリネズミのイラストの入ったミニ手ぬぐいがおまけでついてきた。ロシア語の入った珍しい柄。数量限定なのでお早目にお求め下さい。シアター・イメージフォーラムにて前売り1,300円。

by hikada789 | 2019-03-04 14:54 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
なに、タイトルが下品だ? 失敬な。これはれっきとした学術書に記されていた論文の引用だぞ。No.1151に掲げた『呪われたナターシャ~現代ロシアにおける呪術の民族誌』を読了したが、あまりに面白すぎて付箋を沢山立ててしまい、あれもこれも引用するとかさばるので一点に絞ったところ、タイトルのエピソードが残ることとなった。この民族風俗研究書、あまりに大勢の呪術師、治療師、超能力者が登場するため、逆に普通の人間を見つけることの方が難しいくらいのホニャララ度を誇るのだが、詳細は時間があったら後日紹介するとして、或いはご自分で読んで頂くとして、タイトルのエピソードはこうだ。
ある強力な呪術力を誇る、多くの著書でも名を知られるロシアの女性呪術師(細木数子みたいなのを想像下さい)が、ある日毛皮の帽子を盗まれた。憤慨した呪術師はマスメディアを通じて以下の内容の広告を出す。「もしも一週間以内に私に帽子を返さなかったら、盗んだ奴をイ〇ポにしてやる!」。すると一週間のうちに合計74個もの帽子が彼女の元に送られてきたという。勿論彼女が盗まれた帽子はたった一つなのだが、不能になりたくない帽子泥棒たちは自分のことかもしれぬと、この広告に掲載された呪術師の超常的威力の前に自ら屈したのであった。それほど当地では実力のある呪術師の能力が信用されているということだ。まあ帝政ロシア最後の皇帝ニコライ二世の奥さんも、息子の難病を治療できる怪僧ラスプーチンの神通力を信じた挙句、最終的に一家の破滅とロシア革命を招いたくらいなので、ロシアという国はもともとこういう分野に親和性のある風土だということなのだろう。人類初の宇宙飛行士を宇宙に飛ばし、現在唯一の宇宙船さえ保有している国なのにね。
そんな不思議の国の映画の案内です。

(1)ソクーロフ特集2019
渋谷ユーロスペースでしばしば開催されるソクーロフ・フェアが今年もやってきた。16作品を昼から日替わりで上映。2月23日(土)~3月8日(金)。後半は夜のみ。

(2)第8回死刑映画週間
ロシアとは関係ありませんが、同じくユーロスペースでソクーロフ特集の前週に死刑にまつわる映画特集が組まれてます。比較的新しい作品が並び、『ハンナ・アーレント』も入っているので、ご興味のある方は是非。2月16日(土)~22日(金)。

by hikada789 | 2019-02-17 17:33 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
本格的なボルシチと酸味のきいた黒パンを出すという老舗ロシア料理屋が恵比寿にあると聞いていつか行こうと機会を伺っていたら、既に閉店していた。残念。ロシア料理屋はロゴスキーなど何件かあるが、どこもポーションの割に値段が高めでイマイチ行く気がしない。本場ロシアのレストランは基本的に男子メシの量なので、腹いっぱい食わせてくれない店はボラれてる感がするのだった。それならいっそ自宅で作ればいい。ロシア料理のレシピ本もおしゃれな装丁で出ているが、今月は自宅で気軽に作れるロシア定番料理フェアがデパートを巡回するらしいので、興味のある方は覗いてみて下さい。いつもの硬派なロシアイベントとは趣向の違うイベントのお知らせです。

(1)ロゴスキー銀座食材フェア
ロゴスキー銀座が店で出しているボルシチやペリメニなどを自宅用レトルトや冷凍食品にアレンジしたロシア食材が、都内のデパ地下に並びます。できたてのピロシキも出すと謳ってます。できたてのピロシキはさぞ旨かろうが、サイズが小さいんだよなー。
◆2/14~2/20:二子玉川ライズ東急フードショーB1
◆2/20~2/26:銀座三越B2
◆2/27~3/7:伊勢丹新宿店B1

(2)ソ連歌謡ナイト
ソ連歌謡を知らない? 俗にエストラーダ音楽と呼ばれるソ連時代の大衆向け歌謡曲のこと。理想の社会を高らかに謳ったソ連時代、クラシックや国威発揚音楽が奨励された一方で、西側の影響を受けた資本主義な音楽は害になるとして禁止されたりしたのだが、大衆はもっと気楽に音楽を楽しみたかったため、いわゆる歌謡曲がソ連国内でも多数作曲されてテレビやラジオで盛んに流された。ソ連崩壊後は西側の音楽がどっと入ってきたため、微妙に波長の違うソ連歌謡は過去のものとなったが、当地では未だにノスタルジックな人気がある。雰囲気は日本の1970~80年代のフォークやラブソングに加えて、軍歌っぽいジャンルが混じっているのが特徴。ロシアの音楽につき例によって陽気な曲でも短調が主体で、なかなか味がある。そんなセピア色の音楽を聞かせてくれるイベントだそうだが、夜遅いのでオールナイト覚悟でお試しを。3月1日(金)23時より阿佐ヶ谷ロフト。詳細不明だがツィッターの「イリューシン62」というところが主催している模様。そこにエストラーダの音源もぶら下がっているので、聞いてみて下さい。

(3)オーケストラ・ダスヴィダーニャ定期演奏会
アマチュア楽団によるロシア専門演奏会。演目はショスタコーヴィチの映画音楽「マクシム」、交響曲第2番及び第6番、合唱付き。3月3日(日)14時開演。東京芸術劇場コンサートホール。全席指定2,000円。マニアな匂いがします。

by hikada789 | 2019-02-15 00:03 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
先日池上彰氏のテレビ番組で日露関係を取り上げ、相互の輸出品目を円グラフにしたものを掲げていた。日本からの輸出品の過半は自動車と関連部品、ロシアからの輸出品の過半は原油や天然ガスなどのエネルギー資源であった。両国の需給関係がよく判るグラフであった。しかし宇宙人が20世紀末にモスクワで就労していた頃に日本の新聞に掲載されていた同様の円グラフには、ロシアから日本へ輸出される品目の後ろの方に「女性」という文字が見られたのを覚えている。あれから20年。今この品目はどうなっているのだろう。まあ、エネルギー資源以外でロシアが世界に誇る輸出品といえば何よりもカラシニコフだから、それが対日品目に挙がってこないだけでも良しとすべきかもしれないな。
ロシア文化関連イベントのお知らせです。

(1)ナイトタイム・パイプオルガンコンサート
サンクト・フィルのオルガン奏者を10年務め、ロシア功労芸術家の称号を持つベテラン・オルガニスト、ダニエル・ザレツキーによる演奏会。演目はバッハほか。2/14(木)19:30開演。東京芸術劇場コンサートホール。全席指定1,000円。

(2)桜の木コンサート~ロシアと日本の春~
ロシアと日本の春にまつわる歌曲を荒牧小百合(ソプラノ)とアレクサンドル・ビスロフ(ピアノ)と合唱で紡ぐ小音楽会。チャイコフスキー「四季」、ラフマニノフ「鐘」、「早春賦」「モスクワ郊外の夕べ」ほか。2/15(金)19時開演。杉並公会堂小ホール。入場料4,000円。

(3)表象文化としてのドストエフスキー(国際ワークショップ&講演)
亀山郁夫、沼野充義、望月哲男ほか日本を代表するロシア文学研究者たちと、海外から招いたゲストによるガチのドストエフスキー・マニア講演会。2/16(土)13~18時。東京大学(本郷)法文2号館1番大教室。聴講無料。

(4)革命前後のロシア文学(駒澤大学ワークショップ)
駒澤大学のロシア研究者らによる研究発表シンポジウム。ホダセヴィチやオレーシャといったマイナーな作家アーカイブ研究などが聴講できます。2/16(金)14:00~17:30。駒澤大学駒沢キャンパス種月館9階3-912教場。聴講無料。上の(3)と日時がかぶっているのが残念。

(5)ヴァイオリンとピアノのデュオコンサート
谷本潤(ヴァイオリン)とウラジーミル・ブードニコフ(ピアノ)によるホーリーなコンサート。演目はメトネル、ラフマニノフ、フランク、チェレプニン。2/22(金)18:45開演。日本ホーリネス教団東京中央協会(JR大久保駅より徒歩8分)。全席自由3,000円。

by hikada789 | 2019-02-10 19:04 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
当ブログでも何度か紹介しているウラジーミル・メグレ著『アナスタシア』シリーズが提唱するロシア版スーパー・ナチュラルライフの一環として、メグレ氏自身が事業を立ち上げたシベリア杉オイルが果たしてどんなものかと、昨年秋に取り寄せてみた。どのような製造過程を経て生産されたものであるかは本に書いてあるので読んで頂くとして、食用の際は食前30分にスプーンひと匙、日没前のみとし、金属に弱いので木製スプーンを使うべしと但書がある。効果はいろいろあるが、総じて免疫力アップ、疲労回復、老化防止といったところ。薬ではないので即効性はないが、3か月ほど続けると効果が自覚できるようになるという。
宇宙人は特に患いがあるわけではないが、老化が原因と見られる坐骨神経痛や老眼の進行に難儀しているので、どこかに効けばいいなくらいの気持ちで始めてみた。もとより1日1.5食のファスティングをしているので、日中服用できるのは1回かせいぜい2回。100mlのボトルでもなかなか減らず、使い切るのに2か月かかった。果たして効果のほどは。

巷ではインフルエンザが流行っているそうだが、自宅就労の宇宙人は外出機会が少ないせいか未だ罹っていない。この季節はうっかり満員電車に乗ってしまうと誰かの病原をもらって風邪その他を一度は発症するのが常だったが、この冬はまだない。またこの季節は肌が乾燥しやすく、朝の洗顔は真水のみにして自然油脂を残すようにしてはいるが、それにしても顔に何も塗らずにいるのに粉が吹かないのは例年にないことである。
しかし何より気付かされたのは、髪の毛だ。それまで洗髪や櫛を入れる際に正常と言われる範囲の本数(代謝のため)が毎日抜けていることに疑問はなかったのだが、ひと月程経った頃からいくらも抜けなくなった。以前の1/3か1/4くらいだ。宇宙人は髪の嵩が多いので抜け毛に悩む必要はないのだが、当ブログの閲覧者の中には真剣にお悩みの方もいるかもしれない。とりあえず試してみてはどうでしょう。

ネットで「アナスタシア・ジャパン」を検索し、メイン製品であるシベリアン・シダーナッツオイルかその姉妹品を注文すれば、クール便で届けてくれる。シベリア産なので要冷蔵なのだ。賞味は開封前で1年、開封後は約1カ月だが、私は2か月かけて飲んでも問題なかった。味はなく、強いて言えば木の香り。金属のスプーンがダメというのが新鮮だ。陶器とかでもいいのだろうが、やはり木製が推奨されている。自然を意識して頂けということなのだろう。
宇宙人はその後追加注文をして現在も使用中。ロシア人には恩があるので、鼻持ちならない西洋かぶれのロシア人ではない、地に足の着いた実直なロシア人の事業を微力ながら応援するのだ。

by hikada789 | 2019-01-31 15:51 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
宇宙人のひとり思考。
あるナポリのクラシック音楽家がインタビューで母国を自慢し、「イタリア人は古い建築物や遺跡があちこちに見られる街に住むことでごく自然に歴史に触れ、そうした歴史に囲まれた環境は精神文化を育む上で恵まれている」と芸術家としての意見を述べていた。しかし宇宙人に言わせると、その歴史とやらを象徴する建築物は石造りで固く、見た目は美しくとも人が住む空間としては適していない。人間は表面ひとつをとってもそんなに固くはないし、冷たくもないからだ。ましてや精神など。
宇宙人が西洋の石造りの歴史的建築物を見る時、その直線や鋭角のせいで和むことがない。醜いとは思わないが、暮らすにはイタイと思うし、尖った心が益々尖る気がする。つまり触りたいとは思わない。唯一美しいと思うのは、廃墟になった時だ。誰も住まなくなって放置され、草木に浸食されて直線も鋭角も崩れて丸みを帯びた時、石造りの残滓は映える。そしてその廃墟としての寿命は長い。それを彼らは歴史と呼んでいるというわけだろうか。

対極の木造建築ならどうかと思い浮かべると、廃墟となった木造家屋など目も当てられない。風雪に晒されてみすぼらしく朽ち果て、いかにも貧乏くさい。放っておいても昆虫が解体してくれるだろうが、見苦しいので早々に撤去した方がいい。歴史にしなくていい。
木造建築はやはり人が住んでこそ活きる。木造建築の建材は伐採した木材とはいえ、湿気の吸収・放出や芳香、防虫作用など樹木としての機能が生き続け、まだ完全に死んではいない。勿論石造りに比べれば弾力もある。柔らかいから部分的な修理もしやすい。日常の掃除で日々手入れをするだけでも、木造建築の寿命は結構延びる。柱や床や家具を布で磨くという方法も寿命を延ばすのに効果的だが、何より効果があるのは人間の存在である。人間は呼吸しているが、元々生命のあった木材も呼吸している。居住民と家屋は、呼吸を通じて気の交換をしている。両者は似ているのでそれが可能なのだ。

こんなわけで、人間は木造家屋に住んだ方が自然に適っているし、人が住まなくなった木造家屋は取り壊した方がいい。死んだら自然に還して、次の再生を待つ。循環思想が育つのは木造建築文化においてであって、石造建築文化ではない。石造建築は人が住まない目的の、宗教施設やら劇場やら、廃墟となってもとっておいていいような、眺めるための建築物としてはありだと思う。でもここで人間が暮らしたら、思考は直線で鋭角的になり、冷たくなって自然から離れて行く。これが西洋の直線思考文化を生んだのではないか。

先日「ロマンティック・ロシア」絵画展を紹介する美術番組を見ていてそう思った。19世紀末前後のロシア絵画は「移動派」など一般庶民や農村の風景を題材とした絵画がよく描かれたのだが、その中で家屋は木造であり、欧化に明け暮れた貴族ではないロシアの大多数の人口の暮らしは木造文化であったと指摘されていた。だからロシアのこの頃の絵画は日本人に親しみを感じさせるのだと。
私は絵画だけでなく、貴族趣味ではないロシア文化全体が、自然に囲まれて暮らす日本人の感性と親和性があると考えている。どちらもくんなりと柔らかく、匂いに敏感で、ほんのり温かく、押せば弾力がある。これらは樹木の特徴であって、石の特徴とはかけ離れている。
ちなみに、算命学では五行の木火土金水のうち、一番人間に近いのは木性だとしている。

by hikada789 | 2019-01-23 20:13 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
渋谷の文化村で開催中の「ロマンティック・ロシア」絵画展に行ってきた。ロマンチックの目玉であるクラムスコイの「忘れえぬ女(ひと)」と「月明かりの夜」はそこだけ壁の色を変えて特別扱いされていたが、その他の作品も有名画家の傑作がまんべんなく並んで、19世紀末の情緒溢れるロシア絵画をひと通り堪能できた。
わがおススメの海洋画家アイヴァゾフスキーの作品も、波濤と凪の二点が来ていたよ。透ける波や朧な陽光がファンタジーないい色なのだ。先月まで八王子でやっていた別のロシア絵画展でもアイヴァゾフスキーの大型作品が展示されていたが、絵画愛好の友人の鋭い色彩眼によると、同じ絵でも土産用に印刷されたものは許しがたいほど色が違うらしい。宇宙人は言われてみるまで気付かなかったが、確かに違うね。なので是非会場に足を運んで、印刷ではない本物をご覧下さい。

ところで会場内のショップではマトリョーシカはじめロシアの可愛い民芸品や板チョコなんかが売られているのだが、書籍コーナーで『呪われたナターシャ』なるおどろおどろしいタイトルの本を発見。絶版の匂いがしたので即購入した。なんだこの本は。人文書院が出しているからただのオカルト本ではないぞ。著者はロシア専門の文化人類学者。要するに研究書だ。ソ連時代に迷信として片付けられていた呪術の習俗がソ連崩壊後にあちこちに噴出した実例を並べ、考察を加えた硬派な学術書である。しかしタイトルは勿論、表紙もイケている。呪いに相応しい黒地の中央にほのぼのした伝統柄のマトリョーシカが二体立ち、その一方には顔がないのだった。のっぺらぼうのマトリョーシカとはかように不気味なものなのか。ドキドキするなあ。いずれ読後感想を書くとしよう。
その他ロシア関連の書籍は、絵画展らしく美術関連や音楽関連、可愛い雑貨の紹介、ロシア料理本などアートなものが並んでよく売れているようなので、この機会に是非お買い求め下さい。勿論ロシア文学も新訳を中心に置いてあります。わが愛するマルチ翻訳家、小笠原豊樹の訳によるマヤコフスキーの戯曲もシリーズで一挙放出。玄人向けです。

by hikada789 | 2019-01-15 22:09 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
No.1138で紹介したロシアドラマ『エカテリーナ』の前半が終わって、オープニング映像が変わった。日本のテレビアニメはクール毎にオープニングとエンディングを替えて音楽を売り出そうとするが、ロシアのテレビドラマはまだそうした商法には至っていないらしく、単に主人公のエカテリーナ二世が皇太子妃から女帝にのし上がって、貫録ある風貌になってきたのでそれに合わせて映像を変えた模様。前のオープニングでは、先女帝エリザヴェータがこちらを睨むキメ立ちカットが忘れがたかった。女優の名はユリヤ・アウグ。毎回ドキドキハラハラの、瞠目の怪演でした。名残惜しい。
とはいえ主人公を演じるマリーナ・アレクサンドロワも負けてはいない。小娘を演じていた頃も美人だったが、ロシア帝国の頂点に立つ今となっては怖いものなしでエロい。エロすぎる。勿論そういう役柄なのだし、史実でもあるのだが、家臣と仕事の話をしている最中に愛人の部下が帰ってきて、お姫様だっこされて連れ去られながらも「またあとで」と家臣に手を振る余裕ぶり。家臣が「マジか」という顔をするところは笑い所です。皆さん、笑うように。このドラマ、ロシア本国では子供が見ていい時間に放映されていたのだろうか。ロシアは夏は白夜になって子供たちは11時頃まで外で遊んでたりするから、普通に見ているのだろうなあ。

ロシア文化に関心のある方のために、ロシア的レトリックの光る前半のシナリオを紹介しよう。先帝エリザヴェータは皇太子妃エカテリーナの産んだ子を母親からすぐに引き離して養育したが、二年ぶりに対面させるという約束をドタキャンしてエカテリーナを悲しませる。そしてエカテリーナは頼れる老臣に無理を言って対面の場に連れて来てもらい、遂に感動の対面を果たすのだが、勿論エリザヴェータは額に青筋だ。「わが命令に背きやがって、覚悟はできているんだろうな」という迫力で、しかし言葉は丁寧に老臣を詰問するエリザヴェータに、老臣曰く、「私はあなた様の内心を忖度したのです。お優しい方なので、きっと本心では母子の対面をお許しになりたいのだろうと。もし間違っていたのなら罰して下さい」。エリザヴェータはこの話を沈黙でスルーし、老臣の出しゃばりを許したのだった。実にロシア的レトリックですねえ。

もうひとつ前半から。病気で危篤となった鬼(=エリザヴェータ)のいぬまにクーデターを企てた家臣らが、結局失敗して逮捕され、若くはないが男前の容疑者がハゲ頭の政敵に訊問(=拷問)を受け、「エカテリーナも関与しているのでは」と問われるシーン。
「エカテリーナってどの?」
「皇太子妃のだよ。且つあんたの愛人の」
「……」
「彼女は誰でも受け入れるそうじゃないか」
「……誰でも受け入れると思うのなら、自分で確かめてみたらどうかね」
ハゲ頭はブチ切れる。ロシア的エグイ笑いのシーンでした。やっぱり子供たちには見せたくない気がするなあ。

by hikada789 | 2018-12-25 21:25 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
ロシア映画『アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語』を見てきた。言わずと知れたトルストイの長編小説が原作だが、原作の映像化ではなく後日譚という形をとっており、主人公はアンナではなく、その不倫相手の青年将校ヴロンスキーだ。原作を読むと貞節な人妻を堕落させた軽薄な男にも思えるのだが、アンナの自殺後は責任を感じて戦地へ志願するところで小説は終わっており、この映画はその後戦争で死にきれなかったヴロンスキーが最後の戦場となる満洲で日露戦争を戦い、そこで軍医となっていたアンナの息子と出会うというオリジナルの設定。息子役があまりに老け顔だったので最初ピンと来なかったが、壮年のヴロンスキーがまたいい味のある男前であった。
興味深いのは、小説では無味乾燥な高級役人でしかない夫のカレーニン氏が、映画ではなんだかとても気の毒で同情したくなる人物として好意的に描かれていたことだ。女性の心をときめかせない退屈な男にも魂の叫びはあるのであった。熱演でした。勿論回想の中のアンナも光っており、自殺に至る心理の屈曲は真に迫っていた。ロシア人はやはり狂気をよく知っている。破滅の駅に向かう馬車の中で、アンナに同行していた小間使いの娘の怯えっぷりが秀逸だった。ああいう名もないわき役の使い方でサブリミナル効果が上がるのだ。名作です。もうすぐ上映終了するので是非ご覧下さい。あ、原作は読んでおいた方が話は判りやすいです。
なお『アンナ』に続いて間もなく『マチルダ』が上映開始となります。こちらは最後の皇帝ニコライ二世の愛人のバレリーナの物語で、劇中バレエが堪能できる二度おいしいロシア映画。『アンナ』と並んで帝政末期ロシアの破滅二連発なのだ。

ところでBSフジで連日放送されていたトルコ製ドラマ『オスマン王朝外伝 愛と欲望のハレム』が尻切れトンボのような終わり方をして(というか「続編につづく」で一旦終了した)、翌日から次のドラマ『エカテリーナ』が始まった。このロシアドラマはちょっと前に有料放送で流していたはずだが、もう無料になったのだな。とりあえず第一回を見てみたが、『欲望のハレム』とは比べ物にならないほどクォリティが高い。演技力が違うのだ。なんだあのわき役女帝の迫力は。
主人公のエカテリーナ二世が女帝として即位するのは30歳くらいなので、ドラマの冒頭ではまだドイツからお輿入れしてきたばかりの小娘にすぎない。だから小娘が成長するまで物語を引っ張るのはわき役の大人たちなのだが、姑に当たる(正しくは夫の叔母)女帝エリザヴェータの、コバンザメのように家臣を従えながら宮殿の廊下を真っ直ぐこちらに突き進んでくる迫力が半端ない。オスマン帝国のスレイマン大帝、負けてます。
また、オスマン朝の後宮でも女たちが嫉妬のあまり毒を盛ったりナイフで刺したりといったしょうもない事件を起こしていたが、ロマノフ王朝でお妃の毒殺を企てるのは、母国の国益に忠実なフランス大使なのだった。陰謀の規模が国際級なのだ。しかも会話が隠喩を多く含んで直接的表現を避けるため、役者の微妙な演技や演出と突き合わせながらセリフを追わないと話が見えない。欲望のハーレムの会話は至極わかりやすかった。トルコよ、これは国力の差ではない。文化力の差である。見た目はどちらも豪華絢爛の王宮物語だが、内容にはかなりの差がある。つまり視聴者のリテラシーに差があるということだ。

見よ、宇宙人を。『ハーレム』は結局ほぼ全話見たとはいえ、60分ドラマを録画の早送りにして20分で見ていた。だって話の進みがのろくて単純なんだもん。しかし『エカテリーナ』は早送りできなかった。ちゃんと見ていないと話が見えなくなるからだ。
何よりもあのエリザヴェータのド迫力。あれは有名な女優さんなのかな。美人とは言えない風貌なのに目が釘付けになる。妖怪? エリザヴェータの父であるピョートル大帝が幼少の頃、姉のソフィアが摂政をしていて、やがてこの姉は失脚して修道院に幽閉の身となるのだが、その憤怒の姿を想像で描いたレーピンの絵『皇女ソフィア』の像と重なって見える。意図した演出なのだろうか。今後の展開が楽しみだ。ロシアの連ドラなんてそう放映の機会もないだろうから、是非一度、わき役に注目してご覧下さい。

by hikada789 | 2018-12-06 23:37 | ロシアの衝撃 | Comments(0)
日本人が英語を学習する際、名詞が単数か複数かで文法が違ってくるのをいちいち面倒だと思ったり、子供の頃は三単現のS を付け忘れて点数を引かれたりして、日本語は単数も複数も関係なく意味が通じるのだから英語のこのルールは要らないのではと疑問に思ったことはないですか。宇宙人は思っていたし、そもそも無駄を省きたい性格なのでこういう英文法には納得していなかったこともあり、英語は今も昔も好きでない。しかし面白いもので、その後宇宙人はロシア語なんぞを学び、英語より遥かに複雑で面倒で、あってもなくてもいいような文法上の決まり事にアヘンの如く中毒していくようになる。それはひとえに、ロシア語文法における音楽性の優位に魅せられたからだ。ロシア語は正しい文法で話すだけで脚韻を踏めるので進んで文法を守りたくなるし、煩雑を理由にこの文法がなくなれとは露思わない。ロシア語履修者の皆さん、お判り頂けますよね。
そんなあってもなくてもいいようなロシア語文法の一つに、数詞がある。「1」だけでもアジン、アドノー、アドナー、アドニーと四種類あり、その後に来る単語によって正しく振分け且つ格変化させねばならぬのは勿論のこと、英語は2以上が一律複数形だが、ロシア語は2から4が単数生格をとり、5以上が複数生格をとって複数形を表すという、なんだそりゃなルールがある。このどうでもよさそうな煩雑さについていけない人は授業から脱落していくのだが、脱落しなくてもこの「2、3、4」ルールがなぜ存在するのか知る者はいない。そんなことを疑問に思う余裕のある学習者はいないからだ。いや、いなかった。しかし遂に現れた!

前回記事で案内したマニア向けロシア語講座「ロシア語の数詞について」で井上幸義氏が、よくもまあ隅から隅まで調べて答え(らしきもの)を見つけてくれました。その無料配布レジメは22頁に及び、古代ロシア語から教会スラヴ語まで網羅した文法変遷の比較表まで付録にしているというオタクっぷりに、笑いが止まらぬ宇宙人。規定の二時間で収まり切らずかなりの頁を割愛していた講演内容の全容を紹介したいところだが、あまりにホニャララ度が高くて専門的に過ぎるので、ここではとりあえずロシア語を知らない人にも読むに堪えるポイントだけご報告しよう。但し当ブログはロシア語履修者も読んでいるため、その人たちの向学のために後日詳細を小出しに放出していこうと思う。

結論から言うと、人間の脳はぱっと見だと物体を4個までしか認識できず、5個を越えると瞬時に数を数えきれない。この認知能力の限界がロシア語の数詞文法に反映されているということであった。
その傍証として、漢数字やローマ数字を例に挙げる。知っての通り漢数字は「一、二、三」と3までは横棒の本数で数を表すが、実は殷代では4もまた横棒四本で表す漢字が使われていた。漢数字「四」はその後の時代に統一使用されるようになったものなのだ。ともあれ5に至るともう横棒では利かなくなって「五」という文字が使われる。またローマ数字も「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」と縦棒の本数で数を表しているが、4もかつては縦棒四本で表しており、5になって初めて「Ⅴ」という5という数とは無関係の記号が登場する。
要するに、洋の東西を問わず、人間は4と5の間に明らかな境界を感じている。もっと端的にいえば、5以上は「多い」でひとくくりにして、いちいち数えたくない心理が働いているということなのだ。そういえば日本の算盤だって4を越えると5を表すアタマの玉に引き継がれるし、世界各地の古代の数の数え方にも、5を越えると別の印にして代用する例が多くある。十進法や十二進法以前の風習である。
余談だが、サルの脳というのは1から3までは脳の同じ部分で認識し、4以上になると別の部分で認識していることが実験によって判っている。現代では漢数字もローマ数字も4から「四、Ⅳ」という棒線ではない表記が始まっているから、人間の脳も4か5の辺りで「数えようか数えまいか」逡巡しているのだろう。

そこで再びロシア語の数詞に戻ると、人間の脳がギリギリ瞬時で判別できる数を4までとすると、1から4までは単純に数をそのまま表したアイコンであり、それ以上の5になるとシンボルとしての「五」や「Ⅴ」等で代用しないとおっつかない。そのシンボルには名前が付けられる。だからロシア語では5以上は名詞扱いになるのである。1は完全に形容詞扱いであり、「2、3、4」はその中間の中途半端な文法になっているのはそのためだ。なに、急にワケが判らなくなった? 判りますよね、ロシア語話者の皆さん。これで「ゴート/2ゴーダ/3ゴーダ/4ゴーダ/5リェート」の納得がいっただろう? いったよなあ!
いいんです、一般の読者には判っていただけなくて。コアすぎるし、全部を説明するととても書ききれない。興味のある方は宇宙人までご連絡下さい。井上教授の次の講演会をお知らせしますから、本人に直接訊いて下さい。

by hikada789 | 2018-11-18 18:23 | ロシアの衝撃 | Comments(0)